115 仁 明治天皇(第百二十二代)

ちよろづのたみこころををさむるもいつくしみこそもといなりけれ。

【字句謹解】◯ちよろづの民 千まんの民、我が八千まん國民こくみんを指された ◯心ををさむるも 國家こっか統治の根本義こんぽんぎは、勇威ゆういつて國民こくみん畏服いふくさせることではなく、仁愛じんあいつてそれを心服しんぷくさせることにある。はば民の身を治めるのではなく、民の心を治めることにあるので、天皇皇道こうどうの見地から「心ををさむ」とおおせられた御意ぎょいは正しく解されなければいけない ◯いつくしみ 國民こくみんに同情し仁愛の心で政治をほどこすこと ◯基なりけれ 基礎となるのである。

【大意謹述】いくまん全國民ぜんこくみんを一人ものこらず心服しんぷくさせるといふ政治の本旨ほんしも、全くその根本となるものは國民こくみんを深く愛して仁政じんせいを活用するところにある。

【備考】本御製ほんぎょせいは明治四十三年の御作おんさくで、國家こっか統治の根本が皇道こうどうにあるよしを明らかにされたものと拜察はいさつされる。この事は我が日本の特色であり、たん明治天皇のみでなく各天皇が例外なく注意されたてんであるものの、明治天皇に於かせられては一そうここに意に用ひられたので、じつの執られた政治方針の基調がここあらはれてゐる。この愛民の思想にたもうた御製ぎょせい多數たすうはいせられる。次にその二三を謹記きんきしよう。

(一)國民くにたみのうへやすかれと思ふのみわが世にたえぬおもいなりけり

(二)秋ごとににほふしらぎくもろびとと共にみるこそたのしかりけれ

(三)千萬ちよろずの民と共にもたのしむにますたのしみはあらじとぞ思ふ