93 天 明治天皇(第百二十二代)

あさみどりわたりたる大空おおぞらのひろきをおのがこころともがな。

【字句謹解】◯淺みどり澄み渡りたる大空 一てんの雲もなく、全部が薄いみどり色に澄み渡つた大空。後句こうくの「ひろき」を言ひ出すじょとして使用された言葉 ◯ひろき 限りないひろい空間のこと ◯おのが心 自身の心 ◯ともがな として持ちたいと願望された御意ぎょい

【大意謹述】一てんの邪魔する雲もない、薄みどり色に見渡す限り澄みきつてゐる大空、その無限に廣大こうだいなものを我が心として持ちたいと思ふ。

【備考】本御製ほんぎょせいは明治三十七年の御作おんさくで、

(一)すめるもののぼりてなりし大空にむかふ心もきよくぞありける

(二)さしのぼる朝日のごとくさわやかにもたまほしきは心なりけり

(三)雲の上に立ちさかえたる山松やままつの高きにならへ人の心も

(四)ともすればかきにごしけり山水やまみずのすませば澄ます人のこころを

(五)久方ひさかたの空にはれたる富士の根のたかきを人のこころともがな

と同じく天皇廣大こうだい明朗めいろう御精神ごせいしんえいぜられたのである。

 けだし日本精神せいしんは、朝日の如くさわやかであり、蒼空あおぞらの如く淸朗せいろうであり、富士山の如く高大こうだいである。明治天皇御製ぎょせいには左樣そ うした本質を最もよく表明せられてゐる。