79 琵琶湖疏水工事竣成式ニ臨幸下シ給ヘル勅語 明治天皇(第百二十二代)

琵琶湖び わ こ疏水そすい工事こうじ竣成式しゅんせいしき臨幸りんこうくだたまヘル勅語ちょくご(明治二十三年四月 官報

【謹譯】疏水そすい工事こうじおわルヲク。吏民りみん協力きょうりょくこうまことよみスヘシ。從來じゅうらい我邦わがくに美術びじゅつ工藝こうげいさかんナル、このさいトス。いまヨリこの水利すいりリテ、もっ人工じんこうたすケ、益々ますます精良せいりょうくわヘ、他日たじつ殷富いんぷセヨ。

【字句謹解】◯疏水 地を切り開いて水を通はす〔註一〕參照さんしょう ◯竣ル 仕事をしとぐ ◯吏民 官吏かんりと市民 ◯此土 京都地方 ◯最トス 一番優れてゐる ◯藉リ 活用する ◯人工 工藝こうげいなどのこと ◯精良 精巧せいこうに同じ。精密せいみつによくすること ◯殷富 大きい富。

〔註一〕疏水 吉田東伍とうご氏『大日本だいにほん地名ちめい辭書じしょ』には、疏水そすいを記述して、「大津町おおつまちの西北、三保崎みほがさき閘門こうもん堰門せきもんもうく。明治十八年起工、湖水こすいを引きて京都市に通ぜしむ。五年をて成る。三井寺みいでら觀音堂かんのんどうの下より燧道トンネル穿うがち、暗渠あんきょす者、藤尾ふじおに至る迄、一千三百四十けんその中間に坑井こうせいしょを造り、陽光ようこうを注射し、舟楫しゅうしゅう航過こうか便宜べんぎを計る」とある。

【大意謹述】疏水そすいの工事が最近完成したとふことを耳にした。それは、官吏かんりと民衆との協力によつて成つたわけで、ちんは、その功勞こうろうよみする。在來ざいらい、美術工藝こうげいさかんなことは、京都を以て第一とする。今後、この水利すいりりて、人工を助け、その製作品の上に、一そう優れた手際を示すならば、より以上のとみを致すことが、決してむづかしくあるまい。一同勵精れいせいせよ。