76 壺切御劔ヲ傳フルノ勅語 明治天皇(第百二十二代)

壺切御劔つぼきりのみつるぎつたフルノ勅語ちょくご(明治二十二年十一月三日 官報

【謹譯】壺切つぼきりつるぎハ、歷朝れきちょう皇太子こうたいしつたヘ、もっちんおよヘリ。いまこれなんじつたフ。なんじこれたいセヨ。

【字句謹解】◯壺切ノ劔 東宮とうぐう相傳そうでん御劔みつるぎをいふ〔註一〕參照さんしょう ◯朕カ躬 明治天皇御身おんみただ明治天皇慶應けいおう三年正月九日に御踐祚ごせんそ明治元年八月二十七日に御卽位ごそくいあり、立太子りったいししきを行はせられなかつた ◯ 皇太子嘉仁よしひと親王しんのう御事おんこと

〔註一〕壺切ノ劔 名稱めいしょう由來ゆらいは明らかではなく、現在の御劔みつるぎはもと藤原ふじわら長良ながらの所有であり、醍醐だいご天皇が皇太子にましました際に、宇多う だ天皇からたまはつて以來いらい東宮とうぐう相傳そうでんの例を開いたとつたへられてゐる。御冷泉ごれいぜい天皇康治こうじ二年(或は後三條天皇の治曆四年ともいふ)內裏だいり燒亡しょうぼうの時にこれが失はれ、一時は他劔たけんへられたが、後深草ごふかくさ天皇正嘉しょうか二年に勝光明院しょうこうみょういん寶藏ほうぞうから、それが出たので、再び東宮とうぐう相傳そうでんとして現在に至つたといはれる。

【大意謹述】壺切つぼきりつるぎは代々皇太子につたへるもので、ちんの代に及んでゐる。今囘こんかいこれをなんじ嘉仁よしひとつたへる。なんじは朕がかくする意をよく了解して大切にしなければならない。