32 皇太子を立つるの宣命 文德天皇(第五十五代)

皇太子こうたいしつるの宣命せんみょう(嘉祥三年十一月 文德實錄)

天皇詔旨勅命親王諸王諸臣百官人等、天下公民、衆聞⻝宣。隨法 可有止志天、惟仁親王立而皇太子定賜。故此之狀、百官人等仕奉禮止天皇勅旨、衆聞⻝宣。

【謹譯】天皇すめらりたまふ勅命おおみことを、親王み こたち、諸王おおきみたち、諸臣お みたち、百官もものつかさひとたち、あめした公民おおみたから、もろもろ聞⻝きこしめさへとる。のりのままにるべきまつりごととして、惟仁これひと親王しんのうてて皇太子ひつぎのみこさだめたまふ。さまさとりて、百官もものつかさひとたちつかたてまつれとりたまふ天皇すめら勅旨おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

【字句謹解】◯天の下の公民 天下じゅうの一般國民こくみん ◯法のままに有るべき政として 國法こくほうしたがつてといふ程の意、天下の政治は國法こくほうしたがはなければならないものであるから ◯是の狀 立太子りったいしのこと。

【大意謹述】天皇おおせられる大命おおみことを、諸親王、諸王、諸臣、朝廷に奉仕するすべての官吏かんり及び一般國民こくみんきこしめされるやう告げる。天下の政治は定められた國法こくほうしたがはなければならないのであるから、今囘こんかい惟仁これひと親王しんのうを立てて皇太子と決定することにした。ゆえにこの樣子ようすを聞き知つた官吏かんりたちは、今迄通り忠實ちゅうじつに奉仕するやうにとおおせられる天皇大命おおみことを、全てがきこしめされるやうもうし上げる。