21 淫祠崇拜を禁ずるの勅 光仁天皇(第四十九代)

淫祠いんし崇拜すうはいきんずるのみことのり(寶龜十一年十二月 續日本紀

如聞、比來無知百姓、搆合巫覡妄崇淫祀蒭狗之設、符書之類、百方作恠、塡溢街路。託事求福、還渉厭魅、非唯不畏朝憲、誠亦長養妖妄。自今以後、宜嚴加禁斷。如有違犯者五位已上錄名、六位已下所司科決。但有患禱祀者、非在京內者、許之。

【謹譯】くがごとくんば、比來ちかごろ無知む ちの百せい巫覡ふげき搆合こうごうし、みだり淫祀いんしたっとび、蒭狗すうくもうけ符書ふしょたぐい、百ぽうかいし、街路がいろ塡溢てんいつす。ことたくしてさいわいもとめ、かえり厭魅えんみわたる、ただ朝憲ちょうけんおそれざるのみにあらず、まことまたなが妖妄ようもうやしなふ。自今じこん以後い ごよろしくおごそか禁斷きんだんくわふべし。違犯者いはんしゃあらば、五已上いじょうしるし、六已下い か所司しょし科決かけつせよ。ただわずらいありて禱祀とうきするもの、きょううちにあるにあらざるものはこれゆるさん。

【字句謹解】◯巫覡 男女のかんなぎかみつか祈禱きとうおこなひ、神意しんいうかがひなどする ◯搆合 なれ合ふこと ◯禱祀 まつるべき理由なきものを祭る ◯蒭狗 祭に用ゐるわらいぬ ◯符書の類 神明しんめい加護か ごを記した守り札 ◯塡溢 滿ちあふれる ◯厭魅 奇怪な亂神らんしんの類におぼれる ◯朝憲 政府の法令 ◯妖妄 迷信にとらはれたあやな存在 ◯禁斷 やめさせる ◯科決 罪を所斷しょだんす ◯禱祀 かみいのり、まつる。

【大意謹述】聞く所によると、近頃、無智む ちの人民が、男女の祈禱者きとうしゃなどとれ合つて、みだりあやなものをまつり、わらいぬや守り札類を有難がつて、いろいろの奇怪を演じ、それが到るところに流行してゐる。それらの徒は、事に託して幸福こうふくを求め、しかもそれがしんの幸福を所以ゆえんでない方面に走り、奇怪な事物におぼれつつある。左樣そ うした事柄はただに政府の法令を無視む しするばかりでなく、いつ迄も迷信を助長するから、おごそかこれを禁じなくてはならぬ。きんに背くものは、五位以上のものなら、その姓名をしるして上申じょうしんし、六位以下のものは、有司ゆうしに於て罪をだんぜよ。ただし病のために祈禱きとうするもの、あるいは京の內にをらぬものは、この限りでない。