19 東宮を立つるの宣命 光仁天皇(第四十九代)

東宮とうぐうつるの宣命せんみょう(寶龜二年正月 續日本紀

明神御八洲養德根子天皇詔旨勅命親王諸王諸臣百官人等天下公民、衆聞⻝宣。

隨法皇后御子他戸親王立爲皇太子。故此狀悟百官人等仕奉詔天皇御命、諸聞⻝宣。

故是以大赦天下罪人。又一二人等冠位上賜治賜。又官人等大御手物賜。高年窮乏孝義人等養給治賜久止勅皇命、衆聞⻝宣。

【謹譯】

あきみかみ大八洲おおやしまぐにろしめす養德やまと根子天皇ねこすめらみこと詔旨おおみことらまとりたまふおおみことを、親王み こたち、諸王おおきみたち、諸臣お みたち、百官もものつかさひとたち、あめした公民おおみたから、もろもろきこしめさへとる。

のりのまにまに皇后きさき御子み こ他戸親王おさべのみこ皇太子ひつぎのみこさだめたまふ。さまさとりて百官もものつかさひとどもつかへまつれとりたまふ天皇すめら御命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

ここもっあめしたひろく罪人つみびと大赦ゆ るしたまふ。また一人ひとり二人ふたりども冠位かがふりくらいげたまひおさめたまふ。また官人つかさびとどもに大御手おおみてものたまふ。年高としたかひと窮乏ま ずしきひと孝義こうぎあるひとどもやしなひたまひおさめたまはくとりたまふすめらおおみことを、もろもろきこしめさへとる。

【字句謹解】◯養德根子天皇 養德ようとくやまとと同じ。天平てんぴょう九年に大倭おおやまと大養德おおやまとと改め、更に同十九年にきゅうふくせしめられた ◯皇后の御子 皇后の御腹おはら皇子おうじ ◯大御手つ物 天皇御自身の御手おてづからたまはる物 ◯孝義ある人 親孝行な人の意。

【大意謹述】現人神あらひとがみとして日本全土を御統治あそばされる當代とうだい天皇おおせられた御言葉を親王しょしんのう諸王しょおう諸臣しょしん、百かんの人々及び國民こくみん一同も拜承はいしょうあるやう告げまゐらせる。

 今囘こんかい國法こくほうの命ずるままに、皇后の御腹みはら皇子み こ他戸親王おさべのしんのうを皇太子に決定する。ゆえにこのことをよく理解して、朝廷に奉仕するすべての官吏かんりは、せいを出すやうにとおおせられる天皇御詞おことばを、一同の方々もきこしめすやうにと申し上げる。

 この目出度め で たい記念として、天下一般に罪人をゆるされる。又、一二にんは地位を上げ優待する。又、官吏かんり一般には御手お てづから物品をたまはる。年老いた人、生活に苦しむ人、親孝行な人などを適當てきとう扶助ふじょするとおおせられる天皇御詞おことばを一同の方々もきこしめされるやうに申し上げる次第である。