16-2 再び群臣に下し給へる宣命 稱德天皇(第四十八代)

ふたた群臣ぐんしんくだたまへる宣命せんみょう(第二段)(天平神護元年三月 續日本紀

復有人、淡路侍坐率來、佐良、天下之米無等在人良之止奈毛念。然其人天地宇倍奈由流之天授賜仁毛不在。何天可止奈良方、志愚心不善之天、天下不足。然乃味仁不在、逆惡仲末呂同心之天、朝廷無止在人在。何此人復立無止。自今以後仁方、如此己止詔大命、聞⻝宣。

【謹譯】またあるひとは、淡路あわじはべするひとさらみかどてて、あめしたしろめしめむとおもひてあるひともあるらしとなもおもほす。しかれどもそのひと天地あめつちのうべなみゆるしてさずけたまへるひとにもあらず。なにをもちてかるとならば、こころざしおろかにこころからずして、あめしたおさむるにらず。しかのみにあらず、きた仲末呂なかまろこころかわして朝廷みかどうごかしかたぶけむとはかりてあるひとにあり。なんひとをまたてむとおもはむ。いまより以後い ごにはかくのごとくおもひてはかることめとりたまふ大命おおみことを、きこしめさへとる。

【字句謹解】◯淡路に侍り坐する人 淳仁じゅんにん天皇御事おんこと藤原仲麻呂ふじわらのなかまろと共に天皇思召おぼしめしに反した結果、淡路あわじに流されたもうた所謂いわゆる淡路の廢帝はいていにまします ◯率て來て 奉戴ほうたいしての意 ◯更に帝と立てて 再度皇位こういかれること ◯うべなみ うべなひに同じで、だくする意 ◯逆惡き仲末呂 藤原仲麻呂ふじわらのなかまろのこと。れは最初孝謙こうけん天皇御寵愛ごちょうあいを得たが、ちょうおとろへるに及び反してちゅうせられた。詳細は『神祇じんぎ佛敎ぶっきょう篇』『軍事外交篇』参照さんしょう ◯心を同して 淳仁じゅんにん天皇仲麻呂なかまろ義女ぎじょきさきとされた關係かんけいから、仲麻呂なかまろ同心どうしんであつたと考へられたのである。

【大意謹述】又、ある一部の人々は現在淡路あわじにゐられる廢帝はいてい奉戴ほうたいして、再度皇位こういけ天下を治めしめようと考へてゐるらしい噂をもある。しかし、廢帝はいていは決して天地の諸神しょじん思召おぼしめしかなつて帝位ていいさずけられた人ではない。何故なにゆえこれを知るかといへば、元來がんらい賢明けんめいかたでなく、性質も不良で、天下の政治を執るべき資格がない。それのみでなく、あの奸惡かんあく藤原ふじわら仲麻呂なかまろと協力して朝廷の基礎を動かし傾けようと計つた。どうしてこの人を再び皇位こういけることが出來で きようか。今後はさうした事を考へて運動するのを中止せよ。かう天皇おおせられる御詞みことばを皆々きこしめすやうもうし上げる。