12 卽位の宣命 孝謙天皇(第四十六代)

卽位そくい宣命せんみょう天平勝寶元年七月 續日本紀

天皇御命良末止勅命、衆聞⻝宣。

挂畏我皇天皇、斯天日嗣高御座受賜、仕奉負賜、頂受賜末里、進不知、退不知、恐久止天皇御命、衆聞⻝勅。

故是以御命坐勅、朕者拙劣雖在、親王始而、王等臣等諸天皇朝庭立賜部留⻝國戴持而、明淨心以、誤落言無助仕奉弖之、天下者平治賜、惠賜布閇支止奈毛、神隨所念坐久止天皇御命、衆聞⻝宣。

【謹譯】天皇すめら御命おおみことらまとりたまふおおみことを、もろもろきこしめさへとる。

けまくもかしこおおきみ天皇すめらみこと、この天日嗣あまつひつぎ高御座たかみくらわざをうけたまはりてつかへまつれとおわせたまへいただきにうけたまはりかしこまり、すすむもらに退しりぞくもらにかしこみまさくとりたまふ天皇すめら御命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

れ、ここて、御命おおみことにませりたまはく、つたなおじなくあれども、親王み こたちをはじめて、おおきみたち、おみたちもろもろ天皇すめら朝廷みかどてたまへる⻝國おすくにまつりごといただきもちて、あかきよこころをもちてあやまおとすことなくたすつかまつるによりてし、あめしたたいらけくやすけおさたまめぐみたまふべきものにありとなも、かんながらおもほしさくとりたまふ天皇すめら御命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

【字句謹解】◯天皇が御命 孝謙こうけん天皇おおせ ◯らまと 確かにと念をおすこと ◯我が皇天皇 聖武しょうむ天皇を申したてまつる ◯負せたまへ 責任を持たせられる ◯頂にうけたまはり 尊敬の念をもつて皇位こういぐこと ◯拙く劣く 才德さいとく共におとつてゐる意。勿論もちろん天皇御遜辭ごそんじである ◯戴きもちて とうとみ重んじて保つ。

【大意謹述】天皇おおせとして告げられる大命おおみことを、一同の方々もきこしめされるやうもうし上げる。恐れ多くも先帝聖武しょうむ天皇に於かせられては、今囘こんかいちんに向はれて、「この萬世ばんせいけい皇位こういいで奉仕するやう」と重任じゅうにんを託せられた。朕はそのむねの上もなく尊敬してうけたまわつた。が、進んですることも出來で きず、退いてあまりの大任たいにんはたすだけの才德さいとくがあるかと疑はざるを得ないとおおせられる天皇御詞みことばを、一同の人々もきこしめされるやう申し上げる。

 このゆえ御卽位ごそくいあたつて、天皇大命おおみこととして一同に以下の事を告げまゐらせる。ちん才德さいとく共に天皇として似合に あはしくはないが、親王しょしんのうをはじめ、諸王しょおう諸臣しょしんなどの協力のもとに、御代々ごだいだいの制定された政治方針をとうとみ重んじて保つてゆきたい。したがつて一同は忠義ちゅうぎに厚く、二しんなく奉仕する心をもつて萬事ばんじ失政しっせいのないやう朕を輔佐ほ さしてほしい。かくてこそ始めて天下は平和で安穩あんのんとなり、國民こくみん愛撫あいぶするのじつげるであらうと考へる。右、おおせられる天皇御詞みことばを、一同の方々もきこしめすやう告げまゐらせる。