6-2 卽位の宣命 文武天皇(第四十二代)

卽位そくい宣命せんみょう(第二段)(元年八月 續日本紀

是以百官人等、四方⻝國治奉任賜幣留國國宰等麻氐爾天皇朝廷敷賜行賜幣留國法過犯事無、明誠之心以而、御稱稱而緩怠事無、務結而仕奉詔大命、諸聞⻝詔。

故如此之狀聞⻝悟而、款將仕奉人者、其仕奉禮良牟狀隨、品品讃賜、上賜、治將賜物曾止天皇大命、諸聞⻝詔。

【謹譯】ここもって、百官もものつかさひとども、四方よ も⻝國おすくにおさめまつれとけたまへる國國くにぐにみこともちどもにいたるまでに、天皇すめら朝廷みかどきたまひおこなひたまへるくにのりあやまおかことなく、あかきよなおまことこころをもちて、いやすすみすすみてたるおこたことなく、つとしまりてつかへまつれとりたまふ大命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

如此か くさまきこしめしさとりて、いそしくつかへまつらむひとは、つかへまつれらむさまのまにまに、品品しなじなめたまひ、げたまひ、おさめたまはむものぞと、りたまふ天皇すめら大命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

【字句謹解】◯四方の⻝國 諸方の支配こく ◯任けたまへる國國の宰ども 就任させた各地方の長官どもの意、さいは「みこともち」とくんずる。命持みこともちのことで、天皇大命たいめいうけたまわひ持つてくにを治める義である ◯明き 忠義ちゅうぎに厚い心 ◯淨き わたくしのない心 ◯直き 曲つたところのない正直な心 ◯誠の心 少しも裏表うらおもてのない心 ◯いやすすみすすみて 自己の職務に忠實ちゅうじつで、はげむことのみを考へ實行じっこうする意 ◯緩み怠る事なく 氣分きぶんの緊張を失つたり職務を怠つたりすることなく ◯務め結りて 職責しょくせきを堅く執り持つてゆるめないこと ◯いそしく仕へまつらむ人 眞面目ま じ めに奉仕する人 ◯仕へまつれらむ狀のまにまに 奉仕の成績にしたがつて ◯品品 等差とうさのあること ◯治め 善惡ぜんあく何事をも適當てきとう處理しょりすること。

【大意謹述】したがつて朝廷に奉仕する百ぱん官吏かんりを始め、諸地方を統治すべき御命ぎょめい天皇から下された國司こくしに至るまで國法こくほうたがつたり、これを犯したりすることなく、忠義ちゅうぎに厚く、わたくしのない、正直な、まことの心で、職務をおこたることなく、堅く職責しょくせきを守るやうにとおおせられる御詞おことばを、一同も拜承はいしょうされるやう告げる。

 そこで、陛下には以上のむねをよく理解して眞面目ま じ めせいを出す者は、その成績にしたがひ、褒賞ほうしょうさるるであらうとおおせられる天皇大命おおみことを、皆々も承知あるやう、特につたへ申す。