大日本詔勅謹解6 雜事篇 序言

序言

 本篇には、各時代の生活に交渉ある詔勅ごしょうちょく謹載きんさいした。政治・經濟けいざいかんするものもあれば、風敎ふうきょう道德どうとくに交渉を持つものもある。あるいは風俗・地文ちもんその他、各般かくはんの事項にわたつてゐる。したがつて一見、そこに統一がないやうであるけれども、必ずしも左樣そ うでない。全般を通じて、はいするところは、結局、善政ぜんせいを旨とし、敎化きょうかを尊重し、文化を促進せらるる旨からたまわつた詔勅しょうちょくが大部分を占めてゐる。

 それによつて、歸納きのうし得た一つに到著點とうちゃくてんは、歷代れきだい天皇が、天業てんぎょう恢弘かいこうすべく、常に善政ぜんせいほどこすことを念頭に置かれ、つ人民を正しく指導して、文化を進める事に努められた上にある。つ本篇にいちじるしく現はれてゐる事例の一つは、天皇明治維新功臣こうしんを優遇し、その勳績くんせき顯揚けんようせらるるについて、周到しゅうとう切實せつじつを極められたてんで、やはり、善政の實現じつげんに努力せらるる尊い御精神ごせいしん發露はつろによるものと拜察はいさつする。

 また一方から考へると、各時代に於ける主要文化及び歷代れきだい生活の諸相しょそう說明せつめいし、有力な根本史料たるべきもの少くない。したがつて、この多方面にわた詔勅しょうちょくはいすると、次ぎから次ぎへ興味多き諸現象に接するの思ひがする。それを裏付ける大公たいこう至正しせい精神せいしん觸著しょくちゃくることは、感激に堪へない。

 昭和九年六月   高須芳次郞 謹識