63 第十九帝國議會開院式ノ勅語 明治天皇(第百二十二代)

だい十九帝國ていこく議會ぎかい開院式かいいんしき勅語ちょくご(明治三十六年十二月十日 官報

【謹譯】

ちんここ帝國ていこく議會ぎかい開院かいいんしきおこなヒ、貴族院きぞくいんおよ衆議院しゅうぎいん各員かくいんク。

帝國ていこく締盟ていめい列國れっこくトノ交際こうさい益々ますます親厚しんこうくわフルハ、ちんふかこれよろこフ。しかシテ東洋とうよう平和へいわ帝國ていこく利權りけん保持ほ じスルため緊要きんようナル國際こくさい交渉こうしょうかんシテハ、國務こくむ大臣だいじんヲシテ愼重しんちょうことあたラシム。

ちん國務こくむ大臣だいじんめいシテ、財政ざいせいかんスル經畫けいかくさだメシメ、明治めいじ三十七年度ねんど豫算よさんハ、各般かくはん法律案ほうりつあんとも議會ぎかいセシム。卿等けいら和衷わちゅう審議しんぎもっ協賛きょうさんにんつくシ、ちんのぞところヘヨ。

【字句謹解】◯締盟列國 條約じょうやくを結んだ諸國及び同盟こくとなつたイギリスとを指す ◯緊要ナル國際ノ交渉 行はなくてはならない國際間こくさいかん手續てつづきの意で、主として三ごく干渉かんしょう以來いらい露骨ろこつになつたロシアの東方政策にたいして、朝鮮を守り、東洋平和を確實かくじつにする手段をること ◯卿等 兩院りょういんの議員にたいしておおせられた御言葉 ◯和衷審議 なごやかに誠心せいしんを以て論議する ◯協賛ノ任ヲ竭シ 國政こくせい審議しんぎ賛成する議員の本質を充分じゅうぶんつくすこと。〔註一〕參照 ◯望ム所ニ副ヘヨ 期待にそむかないやうにせよ。

〔註一〕協賛ノ任 第十九議會ぎかいに於ける衆議院の構成は、政友會せいゆうかい百二十八名、憲政けんせい本黨ほんとう八十五名、同志どうし研究かい十九名、帝國黨ていこくとう十八名、中正俱樂部ちゅうせいくらぶ三十三名、交友俱樂部こうゆうくらぶ二十五名、無所屬むしょぞく六十八名で、前三者合計の反政府派は二百三十名の絕對ぜったい多數たすうとなり、一きょかつら內閣をほふ計畫けいかくを立てた。この時野黨やとうから選出された議長河野こうの廣中ひろなか奉答文ほうとうぶんが立派な內閣彈劾だんがい上奏文じょうそうぶんであつたため、政府は遂に解散奏請そうせいし、兩院りょういん共に奉答文ほうとうぶんのない議會ぎかいとして、我が議會ぎかい史上に一異例をのこした。無期延期として議長が起草きそうした文案は次の如きものである。

うやうやしくおもふに、車駕しゃが親臨しんりんしてここに第十九かい帝國ていこく議會ぎかい開院かいいんの式をげ、優渥ゆうあくなる聖詔せいしょうたまふ。臣等しんら感激の至りに堪へず。今や國運こくうん興隆こうりゅうまことに千ざいの一ぐうなるに方て、閣臣かくしんの施設れにともなはず。內政ないせい彌縫びぼうこととし、外交は機宜き ぎしっし、臣等しんらをして憂慮ゆうりょあたざらしむ。あおぎ願はくば聖鑑せいかんたまはむことを。臣等しんら協賛きょうさんにんり。愼重しんちょう審議しんぎを以て、かみ陛下の聖旨せいしに答へたてまつり、しも國民こくみんの委託にむくいむことをす。衆議院議長河野こうの廣中ひろなか誠惶せいこうつつしんそうす。」

【大意謹述】ちんは今、第十九帝國ていこく議會ぎかい開院式かいいんしきに臨むにあたつて、貴族院及び衆議院の議員に所感しょかんを告げる。

ちんは我が帝國ていこくと各種の條約じょうやくを結んだ諸外國との交際が、年々むつまじくなつてくのに、滿足まんぞくを感ずる。しかもこのあいだつて東洋の平和と我が帝國ていこく權利けんりとを完全に保つため、是非行はなければならない國際間こくさいかん手續てつづきに就いては、ちんから國務こくむ大臣に命じて注意深くそれを處理しょりせしめてゐる。

 ちんは更に國務こくむ大臣に命じ、我が財政に就いての方針を定めさせ、明治三十七年度の豫算よさん案、その他の諸法律案を共に議會ぎかいに提出させ、議員らの審議しんぎせしめる。議員らは、なごやかに誠心せいしんを以てこれ審議しんぎし、議員の本務ほんむつくして賛成し、ちんの期待にそむかないやうにありたい。