42 王政復古の功臣に賜はりし勅語 明治天皇(第百二十二代)

王政おうせい復古ふっこ功臣こうしんたまはりし勅語ちょくご(明治二年九月)

朕惟、皇道復古、朝憲維新、一資汝有衆之力。朕切嘉奬之、乃頒賜以酬有功。汝有衆勖哉。

【謹譯】ちんおもふに、皇道こうどう復古ふっこ朝憲ちょうけん維新いしん、一になんじ有衆ゆうしゅうちからる。ちんせつこれ嘉奬かしょうす。すなわ頒賜はんしもっ有功ゆうこうむくゆ。なんじ有衆ゆうしゅうつとめよや。

【字句謹解】◯皇道の復古 皇室におかせられて守りきたられし道義どうぎ建國けんこく精神せいしんを昔の天皇御親政ごしんせい時代の如くにふくして發揚はつようする意 ◯朝憲の維新 朝廷の組織・法制その他を一新する事 ◯嘉奬 喜びつ進んでほめる ◯頒賜 御下賜ご か しの物をわかあたへられる。〔註一〕參照 ◯勖めよや 勉强べんきょうせよといふ意。

〔註一〕頒賜 當時とうじ、三じょう實美さねとみ岩倉いわくら具視ともみその他木戸き ど大久保おおくぼ西郷さいごうらにたい賞典しょうてん御沙汰ご さ たがあつた。それは左の如くである。

五千ごく 三じょう實美さねとみ/同上 岩倉いわくら具視ともみ/千八百石、じょじゅ 木戸き ど孝允こういん/同上 大久保おおくぼ利通としみち/千八百石 廣澤ひろざわ眞臣まおみ/千五百石 中山忠能ただやす/千石 正親町おおぎまちじょう實愛さねなる/千石 大原重德しげのり/千石 東久世ひがしくぜ通禧みちとみ/千石 小松淸廉きよやす(帶刀)/千石 後藤元曄もとてる(象二郞)/千石 岩下方平まさひら(次左衞門)/八百石 さわ宣嘉のぶよし/八百石 由利ゆ り公正きみまさ/五百石、じょしょう 犬山藩主 成瀨なるせ正肥まさあつ/四百石 名古屋藩 田宮篤輝あつてる(如雲)/四百石 福岡ふくおか孝弟こうてい(藤次)/四百石 中根師賢もろかた(雪江)/四百石 廣島 辻維嶽これたけ(將曹) 以上 永世祿えいせいろく

五千石、じょしょう 山內やまのうち豐信とよのぶ/千五百石 伊達だ て宗城むねき/百石 江藤胤雄たねお(新平)/百石 島義勇よしたけ(團右衞門)/百石 水戸藩 北島秀朝ひでとも/百石 土方ひじかた久元ひさもと/百石 西尾爲忠ためただ/五十石 郡山藩 新田にった義雄よしお  以上 終身祿しゅうしんろく

きんりょう 名古屋藩 田中すけ(國之輔)/金五百兩 高知藩 神山かみやま君風くんぷう(左多衞)  以上 一時賞賜しょうし

じょじゅ 德川とくがわ慶勝よしかつ/敍しょう二位 松平まつだいら慶永よしなが/敍正二位 淺野あさの茂勳しげこと/敍正三 西郷さいごう隆盛たかもり

【大意謹述】今囘こんかい皇道こうどう道義どうぎ建國けんこく精神せいしん發揚はつようし、王政おうせい復古ふっこむね實現じつげんした事及び在來ざいらい政弊せいへいしりぞけて朝廷の制度・組織をすつかり一新した事については、なんじらの力によるところが少くない。ちんは切にその功勞こうろうよみし、これを賞揚しょうようする事に躊躇ちゅうちょしない。よって各自、そのこうおうじて、ここ位祿いろく及び金品を授ける。なんじらは、ちんの意を諒解りょうかいして、今後、益々ますます皇道こうどう發揮はっきに努めよ。

【備考】功臣こうしんたいして、公平に賞賜しょうしあらせられた事は、彼等を感激せしめ、一そう勤皇きんのう精神せいしん宣揚せんよう全心ぜんしんを傾けたであらう。建武けんぶ中興ちゅうこう頓挫とんざといふ事について、ある史論家しろんかはその賞賜しょうしが公平でなかつたのを、一因としてゐる。論功ろんこう行賞こうしょうの大切なことは、それによってもわかる。明治天皇優渥ゆうあく思召おぼしめしを以て、諸功臣こうしんぐうたまひ、賞賜しょうし公平であつたことはしんに有難い次第である。