21-6 皇太子を廢するの勅 孝謙天皇(第四十六代)

皇太子こうたいしはいするのみことのり(第六段)(天平寶字元年四月 續日本紀

其僧綱及京內僧尼、復位已上、施物有差。內供奉豎子、授刀舍人、及預周忌御齋種種作物、而奉造諸司男女等、夙夜不怠、各竭力誠。宜令加位二級、幷賜綿帛。仕官疎緩、竝減一等。自餘內外諸司主典已上、及天下高年八十已上、中衞兵衞舍人、門部主帥雜工、幷衞士仕丁歷仕三十年已上、加位一級。但正六位上以上、及不仕者不在此例。其在京文武官、職事正六位已上、及月齋社祝等、賜物有差。

【謹譯】僧綱そうごうおよ京內けいない僧尼そうにの、復位ふくい已上いじょうは、ものほどこすことあり。ない供奉ぐ ぶ豎子じゅし授刀じゅとう舍人とねりおよ周忌しゅうき御齋おんいみ種種くさぐさ作物さくもつあずかり、つくりものまつ諸司しょし男女だんじょたち夙夜しゅくやおこたらず、おのおの力誠りきせいつくす。よろしくくらいきゅうくわへ、ならび綿帛めんぱくたまふべし。仕官しかん疎緩そかんなるものは、ならびに一とうげんず。自餘じ よ內外ないがい諸司しょし主典さかん已上いじょうおよ天下てんか高年こうねん八十已上いじょう中衞ちゅうえ兵衞ひょうえ舍人とねり門部かどべ主帥しゅすい雜工ざっこうならび衞士え じ仕丁しちょう歷仕れきし三十ねん已上いじょうは、くらいきゅうくわふ。ただしょうじょう以上いじょうおよつかへざるものれいにあらず。在京ざいきょう文武官ぶんぶかん職事しょくじしょうじょう已上いじょうおよ月齋げっさい社祝しゃしゅくたちは、ものたまふことあり。

【字句謹解】◯僧綱 僧正そうじょう僧都そうづ律師りっしなど ◯復位 くらいを重ねる ◯內供奉豎子 宮中の內道場ないどうじょう供奉ぐ ぶする童子どうじのこと ◯授刀舍人 天皇の警護にあたる役人 ◯周忌の御齋 一定の期日の佛會ぶつえ ◯造を奉る いろいろの物をたてまつる意 ◯夙夜怠らず 朝早くから夜おそくまで自己の職務にせいを出す意 ◯力誠を竭す 懸命けんめいとなる ◯仕官の疎緩なるもの 自己の職務として定められた仕事にせいを出さないもの ◯中衞 禁中きんちゅうの警護役 ◯兵衞 兵衞府ひょうえふぞくする武官ぶかん宮闕きゅうけつ宿衞しゅくえいし、車駕しゃが出入しゅつにゅうの前後又は宮中の守衞しゅえいあたつた ◯舍人 皇室・皇族の雜用ざつようをつかさどる役人 ◯門部 衞門府えもんふぞくし、皇后の御門ごもんを守る役人 ◯主帥 古昔こせき隊正たいしょう上位じょうい校尉こういしもにありし軍職ぐんしょく ◯衞士 宮門きゅうもんの守護役 ◯仕丁 禁中きんちゅう小使こづかい雜用ざつように使用する下役したやくしょう ◯歷仕三十年已上 三十年以上も勤續きんぞくしてゐる者のこと ◯月齋 そうがする月々の法會ほうえ ◯社祝 神官しんかん及び巫祝ほうり

【大意謹述】諸地方にある僧侶そうりょ高位こういにあるもの及び京師けいしの內部に居る僧尼そうにで、復位ふくい以上の者共ものどもには、地位におうじて各種の物品をたまはる。宮中きゅうちゅう內道場ないどうじょう供奉ぐ ぶする童子どうじ警衞けいえいの諸役人又は一定の期日に行ふ佛會ぶつえに各種の物を作つたりたてまつつたりする男女の役人などは、常々早朝から晩に至る迄おこたらないでせい出し、自己の責任をつくすために懸命けんめいとなつてゐるので、この際にくらい二級を加へ、全部に綿布めんぷたまふ。ただ職責しょくせきを熱心に務めない者は、すべて一等を減ずることにする。その他禁中きんちゅう內外の諸役人に主典さかん以上の者・八十歳以上の國民、又、禁內きんだいの守護・宮門きゅうもんの警護の長官・禁裡きんり雜役ざつえき・門番・主帥しゅすい雜工ざっこう、及び禁門きんもん守護職しゅごしょくの兵士、下役したやく雜用ざつようがかりで、三十年以上勤續きんぞくした者にはくらい一級を加へることにする。ただしょう以上及び勤續きんぞくしなければこの限りではない。京都にある文官ぶんかん武官ぶかんしょう以上の者、そうがする月々の法會ほうえ神官しんかん巫祝ほうりなどは、その地位におうじて物品をたまはるであらう。