21-4 皇太子を廢するの勅 孝謙天皇(第四十六代)

皇太子こうたいしはいするのみことのり(第四段)(天平寶字元年四月 續日本紀

其自天平勝寶九歳四月四日昧爽已前大辟罪已下、罪無輕重、已發覺・未發覺・已結正・未結正・繋囚・見徒、咸悉赦除。但犯八虐、故殺人、私鑄錢、强盗竊盗者、不在此例。其天下百姓、成童之歳、則入輕徭。旣冠之年、便當正役。愍其勞苦、用軫于懷。昔者先帝、亦有此趣、猶未施行。自今已後、宜以十八爲中男、二十二已上成正丁。

【謹譯】天平てんぴょう勝寶しょうほうさいがつ昧爽まいそうより已前いぜん大辟たいへきざい已下い かは、つみ輕重けいちょうなく、已發覺きはっかく未發覺みはっかく已結正きけっしょう未結正みけっしょう繋囚けいしゅう見徒けんとことごと赦除しゃじょす。ただし八ぎゃくおかし、ことさらひところし、ひそかぜにるもの、强盗ごうとう竊盗せっとうは、れいにあらず。天下てんかの百せい成童せいどうとしなれば、すなわ輕徭けいようり、旣冠きかんとしなれば、便すなわ正役せいえきつ。勞苦ろうくあわれみ、もちゐてねんごろいたむ。昔者むかし先帝せんていまたおもむきありて、いま施行しこうせず。自今じこん已後い ごよろしく十八をもっ中男ちゅうなんとなし、二十二已上いじょう正丁せいていすべし。

【字句謹解】◯昧爽 夜明けがたのこと ◯已前 以前と同じ ◯大辟罪 大罪たいざいの意 ◯已發覺 もう罪が露見ろけんした者 ◯已結正 訴訟そしょう審理しんり結了けつりょうした者 ◯繋囚 入獄にゅうごくしてゐる者 ◯見徒 獄裡ごくりにある者 ◯赦除 罪を全部ゆるす ◯八虐 八個の大罪たいざいすなわ謀反ぼうはん(社稷を危くす)・謀大逆ぼうだいぎゃく謀叛むほん(國に叛く)・惡逆あくぎゃく不道ふどう大不敬だいふけい不孝ふこう不義ふ ぎとう ◯成童の歳 十五歳前後のこと ◯輕徭 かみかるい工事に使はれること ◯旣冠の年 二十歳前後のこと ◯正役 かみの土木工事に於ける一人前のえき ◯用ゐて懷に軫む 勞苦ろうくに同情して課役かえき年限ねんげんを縮めること。〔註一〕參照 ◯施行 事實じじつに行ふ ◯中男 國家こっか負擔ふたんを半減される者 ◯正丁 一人前の負擔ふたんになふ者。

〔註一〕用ゐて懷に軫む 本勅ほんちょくによつて今まで十七歳以上二十歳までの中男ちゅうなんを十八歳以上とし、二十一歳以上六十歳までの正丁せいていを二十二歳以上とされたのである。

【大意謹述】次に今囘こんかい行ふ大赦たいしゃ範圍はんい及び程度をあきらかにする。天平てんぴょう勝寶しょうほう九年四月四日未明以前の大罪たいざい以下は、行つた罪の輕重けいちょうかんせず、露見ろけんした者も未だ露見ろけんしない者も、捕縛ほばくされた者もされない者も、入獄者にゅうごくしゃ流罪者るざいしゃも全部放免ほうめんする。ただし最も重い八個の大罪たいざいを犯した者、理由なく人を殺した者、ぜに贋造がんぞうした者、强盗ごうとう竊盗せっとうはこの限りではない。

 わが一般の國民は、十五歳前後になれば半額の負擔ふたんを、二十歳前後になれば一人前の負擔ふたんを天下にたいして致さなければならない。ちんはこの者たちの勞苦ろうくに同情し、出來るだけそれを輕減けいげんしようと考へた。昔、先帝せんていに於かせられても同じ叡慮えいりょがあつて、未だ實行じっこうされないうちに中止されたことがあつた。ゆえに朕は今後は、今まで十七歳以上を中男ちゅうなんとして租稅そぜいの半分を負擔ふたんさせたのを十八歳以上と改め、今まで二十一歳以上の男子を正丁せいていとして一人前の負擔ふたんをさせたのを、ここに二十二歳以上と改めることにした。