20-3 皇后を立つるの宣命 聖武天皇(第四十五代)

皇后こうごうつるの宣命せんみょう(第三段)(天平元年八月 續日本紀

然此位米豆良久波、刀比止麻爾母、己夜氣授乎波、一日二日、十日二十日試定止斯、伊波許貴太斯意保天下乎夜、多夜須無止所念坐而、此六年擇賜試賜而、今日今時、眼當衆喚賜而、細事狀語賜布止詔勅聞⻝宣。

【謹譯】しかるにくらいおそさだめつらくは、年々としどしにもおの夜氣や きさずくるひとをば、一えらび、十二十こころさだむとし、いはばこきたしきおほきあめしたことをや、たやすくおこなはむとおもほしまして、六年むとせうちえらびたまひこころみたまひて、今日きょう今時い まのあたりもろもろをしたまひて、くわしきことのさまかたらひたまふとりたまふ詔勅しょうちょくきこしめさへとる。

【字句謹解】◯此の位 皇后こうごう御位みくらいのこと ◯年々にも ここは原文に「刀比止麻爾母と ひ と し に も」とあり、最近まで不明とされてゐた。每年まいとしといふ程のことであらう ◯夜氣授くる人 後宮こうきゅうのこと、夜氣や きは夜の生活を共にするとの意で具體ぐたい的にはがたいが、適確てきかくな表現である ◯こきたしきおほき 重く大きいこと ◯細しき事 皇后冊立さくりつかんする詳細な事情。藤原ふじわら夫人ふじん不比等ふ ひ とむすめであるから、臣下しんか冊立さくりつすることになる。ゆえに一おう群臣ぐんしんにその理由を語られるのである。

【大意謹述】天下の統治者に配偶はいぐうがなければ不都合である理由は以上の如くあきらかだ。しかるにちんがこれ程皇后こうごう冊立さくりつ延引えんいんしたのは、年々としどしちんの皇后として適當てきとうな人をば、一にち・二あるいは十・二十えらび試みたのちに決定しようと考へ、重大な天下の政治を理想的に容易に行はうと思つて、過去六年間はその適任者の撰定せんていに日を費したのであつた。それも今は藤原ふじわら夫人ふじんと定まつたので、本日只今、ちんの前に百かんし、その理由を詳細に語るところを、諸神しょじん諸佛しょぶつきこしめされんことをふ次第である。