20-2 皇后を立つるの宣命 聖武天皇(第四十五代)

皇后こうごうつるの宣命せんみょう(第二段)(天平元年八月 續日本紀

加久定賜者、皇朕御身年月積。天下君坐而年緒長、皇后不坐事、一豆乃善有良努在。又於天下之政宜而、獨知倍伎物不有、必斯理幣政有倍之。此者事立不有、天日月在如、地山川有如、竝坐而可有言事者、汝等王臣等明見所知在。

【謹譯】かくさだめたまふは、皇朕すめら御身お み年月としつきつもりぬ。あめしたきみしてとしながく、皇后おおきさきゐまさざることも、一つのからぬことにあり。またあめしたまつりごときて、ひとるべきものならず、かならずも後方しりえまつりごとあるべし。これことつにあらず、あめ日月ひつきのあるごと、つち山川やまかわあるごと、ならびましてあるべしといふことは、いましたちみこたちおみたちあきらけく見知み しれることなり。

【字句謹解】◯年月積りぬ 天皇はこの時御年おんとし二十九にましました ◯年の緒 年月ねんげつの意、は物をつなぐものでこの場合は意味がない ◯獨り知る 天皇のみでまつりごとを行ふ ◯後方の政 後方しりえ後宮こうきゅうのこと ◯事立つにあらず 特別今にはじまつたのではなく、ちんだけが主張するのでもないとの意 ◯明らけく 明らかに事實じじつを見て知ること。

【大意謹述】この際皇后こうごうを定める理由は、ちん自身も年齡ねんれいちょうじて、皇后を冊立さくりつしても似合に あはしい頃となつたのが一つ、天下の統治者として長い間をながら、皇后のないのは決していことと言はれないのが一つ、更に天下の政治を行ふに就いて、天皇だけのとくで統治されるものではなく、必ず皇后の御仁慈ごじんじつて、始めて完全するからでもある。何もこの理由はちんが特にみなくまでもない。天には常に日月じつげつがあり、地には山川さんせんがあつて、兩方りょうほうならんで都合よくくやうに、くにには天皇・皇后が相共あいともならんでゐるのが、理想的であることを、汝等なんじら諸王臣しょおうしんらもうたがいなく平常ふだんから見知つてゐるはずと考へる。