59 春季御祭典の宣命 明治天皇(第百二十二代)

春季しゅんき御祭典ごさいてん宣命せんみょう(明治四年二月 太政官日誌)

天皇大命。掛卷八柱大神、天神地祇八百萬神、御代御代天皇、都三所大前從四位行侍從藤原朝臣資生使白給波久止左久。新代茂御代祭式改正給利氐、中世與利其祭他道麻自許禮留除給去給、正復給比氐、彌益益天皇大殿又皇太后大殿、殿云殿內外氣久堅石常石護幸幣止乞祈給聞⻝世止

如斯聞⻝氐婆與利後古道違事無過事無持由麻波里、淸麻波里仕奉良志米波牟見行聞⻝天皇大朝廷仕奉百官人等、天下公民等麻氐伊加志夜具波衣、立榮志米幣止天皇大命聞⻝世止美母

【謹譯】天皇すめら大命おおみことにませ。かけくもかしこき八はしら大神おおかみ天神あまつかみ地祇くにつかみ八百萬やおよろずかみ御代み よ御代み よ天皇すめらすべて三ところ大前おおまえじゅしな侍從じじゅう藤原朝臣ふじわらのあそみ資生すけなり使つかいとなしてもうたまはくともうさく。新代あたらしきよいかし御代み よ祭式さいしきあらたただたまときあたりて、中世なかつよよりまつり他道たどうあやまりまじこれるをのぞたまひ、たまひ、ただしきしきふくたまひて、いや益益ますます天皇すめら大殿おおとのまた太后おおきさき大殿おおとのはじめて、殿とのといふ殿との內外うちそとたいらけく、堅石かきわ常石ときわまもさきわたまへといのたまこと聞⻝きこしめせとる。

かくごと聞⻝きこしめしては、いまよりのち古道こどうたがことなく、あやまことなく、ちゆまはり、きよまはりて、つかまつらしめたまはむさまそなはし聞⻝きこしめして、天皇すめら大朝廷おおみかどはじめてつかまつれる百官人もものつかさびとあめした公民おおみたかららにいたるまでにいかしやくはえのごとく、立榮たちさかえしめたまへと天皇すめら大命おおみこと聞⻝きこしめせとかしこかしこみももうす。

【字句謹解】◯掛卷くも 言葉にかけて申すも恐れ多いといふ意味 ◯八柱の大神 前述した ◯茂御世 盛んな御代み よ ◯他道 儒道じゅどう佛道ぶつどうなど ◯古道 かむながらの道、古代じゅん一の神道しんどうかた ◯持ちゆまはり、淸まはりて きよめる事 ◯いかしやくはえの如く いかしはさかんなこと、やくはえはいやさかえにさかえしめる譬喩ひ ゆ

【大意謹述】天皇勅令ちょくめいほうじ、つつしんで八はしら大神おおかみあめ神々かみがみくにの神々、及び四方八方にまします多くの神たち、ならびに代々の天皇陛下、以上三しょ大前おおまえじゅこう侍從じじゅう藤原朝臣ふじわらのあそん資生すけなり使つかいとして申上もうしあげる。王政おうせい維新いしんを迎へて、この盛んな時代に一切の祭式さいしきを正しく改め給ふ時にあたり、陛下には中世以來いらいの不純な祭祀さいしの方法―佛意ぶつい儒意じゅいなどを混入したかたことごとく除かれる事とあいつた。同時に祭式さいしきを正しき古式にふくし、敬神けいしんまことを捧げられる。よっ天皇・皇太后を始め、宮廷の內外において、事故なきやう、盤石ばんじゃくの如く、固く守り給ひ、幸福こうふくあたたまはんことを右三しょ大前おおまえつつしんで言上ごんじょうする。

 以上の如く、今後、祭式さいしき古道こどうたがふことなく、正しくおこなひ、すべてをきよめ、忠實ちゅうじつ神々かみがみつかまつる。神々にはこの事をこころよく受けたまひ、朝廷を始め百かん萬民ばんみんに至る迄、この盛んな時代に益々ますますさかえゆくやう、御力おんちからへ、冥助めいじょたまはんことをいのまつる。以上天皇勅令ちょくめいかしこみて申上もうしあげる。