56 天神地祇鎭座の宣命 明治天皇(第百二十二代)

天神てんじん地祇ち ぎ鎭座ちんざ宣命せんみょう(明治二年十二月 太政官日誌)

天皇大御命。天神地祇八百萬大前正四位行宮內權大丞平朝臣信成使美母白給波久止左久。今年東京新宮造給、八柱神等祭給布爾、大神等乎母同殿奉招奉坐、年緒長無絕事無闕事、祭給波牟彌高聞⻝、大朝廷邊堅磐常磐守給、百官人等乎母過犯事無令奉仕給、新代御政八十國至良奴隈無、足御代伊加志御代幣止、宇豆幣帛稱辭竟奉良久止天皇大御命甘良聞⻝世止

【謹譯】天皇すめらみこと大御命おおみことにませ。天神あまつかみ地祇くにつかみ八百萬やおよろず大前おおまえ正四位おおきよつのくらいしな宮內權大丞くないごんのたいじょう朝臣たいらのあそみ信成のぶなり使つかいとなして、かしこかしこみももうたまはくともうさく。今年ことし東京とうきょう新宮にいみや造給つくりたまひ、八柱やはしらかみらをまつたまふによって、大神おおかみらをもおな殿とのまねまつり、まもまつりて、としながゆることなく、くることなく、まつたまはむこと彌高いやたか聞⻝きこしめして、大朝廷邊おおみかどべ堅磐かきわ常磐ときわまもたまひ、百官人もものつかさびとらをもあやまおかことなく、つかまつらしめたまひ、新代あたらしきよおお御政みまつりくに八十國やそくにいたらぬくまなく、らし御代み よ伊加志い か し御代み よさきはへたまへと宇豆う づ御幣みてぐら稱辭たたえごとまつらくと天皇すめらみこと大御命おおみことつばらに聞⻝きこしめせともうす。

【字句謹解】◯新宮 新しい神殿しんでん ◯八柱の神 高皇產靈神たかみむすびのかみ神皇產靈神かみむすびのかみ玉積產靈神たまつめむすびのかみ生產靈神いくむすびのかみ足產靈神たるむすびのかみ大宮賣神おおみやひめのかみ御⻝津神おおみけつのかみ事代主神ことしろぬしのかみ ◯彌高 益々ますます隆盛りゅうせいにといふ意味 ◯新代 新しきすなわち現代 ◯八十國 八十は八百と同じ數多あまたの義、すなわ萬國ばんこく ◯足らし御代 物事備はれる御代み よの事 ◯伊加志御代 盛んな時代 ◯宇豆 宇豆う づ珍貴ちんき尊嚴そんげんの義 ◯甘ら 委曲いきょくの意。

【大意謹述】天皇すめらみこと勅命ちょくめいにより、ここてんかみかみ、四ほうぽうにまします多くの神々かみがみ御前みまえしょう宮內權大丞くないごんのたいじょう朝臣たいらのあそん信成のぶなりを使者としてつつしんで申上もうしあげる。陛下には今年、東京に新しい神殿しんでんを作られ、八柱やつはしらかみを始めまつり、大神おおかみたちをも同じ殿とのうちしょうじまゐらせて、年々ねんねん歳々さいさい祭事さいじたやさず、かさずにたま思召おぼしめしでゐらせられる。神々かみがみにはこのむねを十分、こころよく受けたまひ、朝廷を磐石ばんじゃくのゆるがぬが如く守り、有司ゆうしかんにも何の手落ておちもなく忠實ちゅうじつ天皇すめらみことつかまつるやうみちびたまへ。またこの新しい時代にあたり、現代の政治が振興しんこうせられて、萬國ばんこく皇威こういを及ぼし、物事ことごと充實じゅうじつして、盛んな御代み よとなし、すべてに幸福こうふくあたたまふやう、珍貴ちんきとうと幣物へいもつ進獻しんけんして御願おねがい申上もうしあげる。大神おおかみたちは、このむねこころよりょうとせられて、加護か ごれられるやう只管ひたすらいのたてまつる。