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48-1 石淸水臨時祭の宣命 孝明天皇(第百二十一代)

石淸水いわしみず臨時祭りんじさい宣命せんみょう(第一段)(弘化四年四月 孝明天皇紀)

天皇、掛畏石淸水御座世留八幡大菩薩廣前美毛申賜倍止、去天祿元年與利奉出給宇津御幣、吉日良辰擇定、官位姓名差使令捧持、東遊走馬調備奉出賜。掛畏大菩薩、平聞⻝天皇朝廷、寶位無動常磐堅磐夜守日守護幸、天下國家乎毛守幸賜倍止美毛申賜者久止申。

【謹譯】天皇すめらみことと、けまくもかしこ石淸水いわしみず御座おわしませる八幡はちまん大菩薩だいぼさつひろきみまえかしこかしこみももうたまはくともうさく、いぬ天祿てんろく元年がんねんよりはじめていだまつたま宇津う づ御幣みてぐらを、吉日きちにち良辰りょうしんえらさだめて、官位かんい姓名せいめい使つかわしてささたしめて、東遊あずまあそはしうま調ととのそなへていだまつたまふ。けまくもかしこ大菩薩だいぼさつたいらけくやすらけくきこしめして、天皇すめら朝廷みかどを、寶位ほういうごきなく常磐ときわ堅磐かきわに、夜守よ もりに日守ひ もりにまもさきはへたまひ、天下てんか國家こっかをもたいらけくやすらけくまもさきはへたまへとかしこかしこみももうたまはくともうす。

【字句謹解】◯天祿元年より云々 石淸水いわしみず臨時祭りんじさいが年中の恒例となつた年のことである。〔註一〕參照 ◯宇津の御幣 宇津う づとうとく珍らしい意、御幣みてぐらは神にたてまつ幣帛へいはく ◯東遊び走り馬 關東かんとう地方の遊びで競馬用の馬、走り馬とは非常な速力を持つた馬、かつて源氏・北条氏などの家臣が競馬に使用したものと同じであるから、「寶位ほうい動きなく」にかかる語句。

〔註一〕天祿元年より 石淸水いわしみず臨時祭りんじさいの起原は、朱雀すざく天皇平將門たいらのまさかど藤原純友ふじわらのすみともらんの平定をいのられて、天慶てんぎょう五年四月二十七日に行つたことにある。のち圓融えんゆう天皇天祿てんろく二年以來、それが恒例となつた。本詔ほんしょう天祿てんろく元年とはいせられるのは、一般のせつ天祿てんろく二年―と一致しない。

【大意謹述】天皇おおせにより、おそなが石淸水いわしみず鎭座ちんざまします八まん大菩薩だいぼさつ廣大こうだい御前みまえつつしんで申し上げる。臨時祭が年中の恒例となつた最初の年、かの圓融えんゆう天皇天祿てんろく元年に奉納せられたとうとく珍らしい御幣ごへいと同種のものを、最上の星𢌞ほしまわりの日をえらび、別記の位にあるぼう勅使ちょくしとして捧げ持たせ、東國とうごくの競馬用の馬を用意して奉納しまゐらす。おそなが大菩薩だいぼさつに於かせられては、このありさを平安にきこしめし、日本中を平和に、朝廷に就いては、永久に變化へんかなく微動だもしない大石たいせきのやうに、皇位こういの基礎を動かす者なく、晝夜ちゅうや共に加護か ごあつて幸福こうふくを下され、全國も無事平穩へいおんに守護して幸ひをあたへられるやう、つつしんで申し上げる。