46-8 國難の平定を祈るの宣命 伏見天皇(第九十二代)

國難こくなん平定へいていいのるの宣命せんみょう(第八段)(正德六年七月 公卿勅使參宮次第)

辭別申賜者久、殊思⻝事在、內外ニ宮正權禰宜以下、各賜一階。此旨令照察給、取祈勅願幽谷如應響、明鏡如寫象仁志氐、寶祚久長、玉體安穩護恤給倍止、恐美毛申賜者久止申。

【謹譯】辭別ことわきもうたまはく、ことおぼしめすことありて內外ないげのみや正權しょうごん禰宜ね ぎ以下い かに、おのおのかいたまふ。むね照察みとおしめたまひて、いのるの勅願ちょくがんは、幽谷ゆうこくひびきおうずるがごとく、明鏡めいきょうかたちうつすがごとくにして、寶祚ほうそ久長きゅうちょうに、玉體ぎゃくたい安穩あんのんまもめぐたまへと、かしこかしこみももうたまはくともうす。

【字句謹解】◯辭別て申し賜はく ことばを改めて特別に申し上げるとの意 ◯思しめす事 主上しゅじょう御考おかんがへなさることがあつて ◯正權禰宜 禰宜ね ぎとは本來ほんらい神主かんぬしもとにあつて、祈年としごい月次つきなみ新嘗にいなめなどの祭祀さいしあずかり、幣帛へいはくけんずる役であるが、後世は神職しんしょく總稱そうしょうとなつた。正權しょうごんはそのちょう次位じ いにある者 ◯一階を賜ふ 一級づつ地位を上げる ◯照察 かみが知りたまふ ◯幽谷の響に應ずるが如く 深い谷が木靈こだまを響かせるやうに大御神おおみかみ天皇御祈願ごきがんきこしめす ◯明鏡の象を寫すが如く 明鏡めいきょう萬物ばんぶつの姿をありのままにうつし出すやうに大御神おおみかみ天皇御心みこころを知りたまふこと。

【大意謹述】更にことばを改めて特に次のことを陛下の思召おぼしめしままに申し上げる、今囘こんかい天皇かせられては、叡慮えいりょもとに、內宮ないぐう外宮げぐう神職しんしょくの長官・次官の二にんに各々一級づつの位をたまふことになつた。大御神おおみかみにはこのよし御照覽ごしょうらんあそばされて、ここに願ひたてまつる事を、深い谷が大きな木靈こだまを響かせるやうに、明らかな鏡が萬物ばんぶつの姿をそのままに映すやうに、天皇御願おんねがい御心みこころを知られ、皇位こういが永久につづき、玉體ぎょくたい御安穩ごあんのんにましますやう御加護ご か ご御慈悲ご じ ひとを加へたまへと、この上もなく恐れつつしんで申し上げる。