46-5 國難の平定を祈るの宣命 伏見天皇(第九十二代)

國難こくなん平定へいていいのるの宣命せんみょう(第五段)(正德六年七月 公卿勅使參宮次第)

故是以、吉日良辰擇定、從二位行權中納言藤原朝臣爲兼王、從五位上行正親町兼重王、中臣從四位下行神祇權少副大中臣師世差遣、忌部正五位下行神祇權少副齋部宿禰尙孝弱肩太繦取懸、內外禮代大御幣金銀御幣相副、持齋令捧持奉出給、內宮爾者御弓、御箭、御餝劍、御桙、御錦蓋、御鏡、御裝束、御玉佩、御麻桶、御線柱、唐錦一段、唐綾一段、火取珠一顆、作花三枝、金鳳一羽、雕馬一疋、左右御馬各一疋率副進給

【謹譯】ここもって、吉日きちじつ良辰りょうしんえらさだめて、じゅこうごん中納言ちゅうなごん藤原朝臣ふじわらのあそみ爲兼王ためかねおうじゅじょうこう正親町おおぎまち兼重王かねしげおう中臣從なかとみのじゅこう神祇じんぎ少副しょうふく大中臣師世おおなかとみのもろよつかわして、忌部いんべしょうこう神祇じんぎごん少副しょうふく齋部宿禰いんべのすくね尙孝なおたか弱肩よわがた太繦ふとだすきけて、內外ないげみや禮代いやじろ大御幣おおみてぐら金銀きんぎん御幣みてぐらあいて、いつかりささたしめていだたてまつたまなかに、內宮ないぐうには御弓おんゆみ御箭おんや御餝劍おんかざりのつるぎ御桙おんほこ御錦蓋おんきんがい御鏡おんかがみ御裝束おんしょうぞく御玉佩おんぎょくはい御麻桶おんあさおけ御線柱おんせんちゅう唐錦からにしきたん唐綾からあやたん火取珠ひとりだま作花さっか金鳳きんぽう雕馬ちょうばぴきに、左右さゆう御馬おんうまおのおのぴきひきへてすすたまふ。

【字句謹解】◯弱肩 弱々しい肩、自分の肩をいふ ◯太繦 神前しんぜんに向ふ時に著物きものの袖をくくるもの ◯內外の宮 伊勢の內宮ないぐう外宮げぐう ◯御箭 矢のこと ◯御箭劍 裝飾そうしょくしたつるぎ實際じっさいに腰にするものではない。後文こうぶんには御飾劍おんかざりのつるぎとある ◯御桙 やりに似た一種の武器 ◯御錦蓋 にしきで飾つたかさ ◯御裝束 儀禮ぎしきの際にふくする衣類一式 ◯御玉佩 たまで飾つてびるもの ◯作花 造花の意 ◯金鳳 金色こんじきの布でおおとりの形をつくつたもの ◯雕馬 彫刻した馬。

【大意謹述】このゆえに最上の吉日を卜定ぼくていして、じゅこうごん中納言ちゅうなごん藤原朝臣ふじわらのあそん爲兼王ためかねおうじゅ位上いじょうこう正親町おおぎまち兼重王かねしげおう及び中臣從なかとみのじゅこう神祇じんぎ少副しょうふく大中臣師世おおなかとみのもろよを派遣し、忌部正いんべのしょうこう神祇じんぎごん少副しょうふく齋部宿禰いんべのすくね尙孝なおたかが弱々しい肩に袖をくくる太いたすきけ、內宮ないぐう及び外宮げぐうに向ひ、御禮おんれいのために大御幣帛おおみてぐらを捧げ、その上金銀の御幣みてぐらへて、かみ御前おんまえたてまつることにした。そのうち內宮ないぐう進獻しんけんする品々は、御弓おんゆみ御矢おんや御裝飾おんそうしょく太刀た ち御桙おんほこ御錦蓋おんきんがい御鏡おんかがみ御裝束おんしょうぞく御玉佩おんぎょくはい御麻桶おんあさおけ御線柱おんせんちゅう唐錦からにしきを一たん唐綾からあやを一たん火取珠ひとりだま・造花三金造きんづくりの鳳鳥おおとり・彫刻された馬一匹に、左右の御馬おんうまを各々一匹づつ、へられる。