41-5 六衞府送るところの釋奠の祭牲を定むるの勅 光孝天皇(第五十八代)

衞府え ふおくるところの釋奠せきてん祭牲さいせいさだむるのみことのり(第五段)(仁和元年十一月 三代實錄)

(其の三)乾兎二頭を送らしむべき事

而今諸衞府、前祭一日之夕、送鮮兎、夜中造醢。豈合禮意。自今以後、潔淨乾曝、先祭三月、送大膳職、依禮令造。其送致之次、左近爲一番、餘府依次輪轉、終而更始。如此則豆實合禮、衞府省煩。

【謹譯】しかいましょ衞府え ふまつりさきだつこと一じつゆうべ鮮兎せんとおくり、夜中やちゅうかいつくる。あに禮意れいいがっせんや。自今じこん以後い ご潔淨けつじょう乾曝かんばくまつりさきだつこと三つき大膳職おおかしわでのつかさおくり、れいりてつくらしむ。送致そうちついでは、左近さこんを一ばんとなし、餘府よ ふついでつて輪轉りんてんし、おわりてはじまる。かくごとくなればすなわ豆實とうじつれいがっし、衞府え ふはんはぶかん。

【字句謹解】◯祭に前つこと一日の夕 まつりの前日の夕方の意 ◯乾曝 充分にほしかはかすこと ◯禮に依りて 『大學式だいがくしき』にはこの部分、「まつりさきだつ三つき大膳職だいぜんしょくに致し、乾曝かんばくしてかいを造り、祭日さいじつ辨貢べんぐす」とある ◯大膳職 神々への神饌しんせん天皇御饌ぎょせんつかさどる役人 ◯送致の次 送る順序 ◯左近 左近さこん衞府え ふのこと、これは六衞府え ふの一である ◯餘府 六衞府え ふ中から左近さこん衞府え ふを除いたのもの ◯次に依つて 一定の順で ◯輪轉し 順次に送ること ◯煩を省かん 手數てすうを省くことが出來よう。

【大意謹述】しかるに現在の六衞府え ふの人々は、まつりの一日前の夕方、新しいうさぎを送り、そのの間に鹽漬しおづけを造つてしまふ。これがいにしえから定められた神々を禮祭らいさいする方法にがっするだらうか。ゆえに今後は大學式だいがくしきが示すやうに少しもけがれのないものを十分にし固めて、祭祀さいしの三ヶ月以前に神饌しんせんを取扱ふ大膳職だいぜんしょくに送り、正しい方法で之を造らせるのがよい。送る順序としては、左近さこん衞府え ふが第一番となり、以下地位にしたがつた順を正しめ、一𢌞まわりしたらふたた左近さこん衞府え ふから始める。かくすればまつりに捧げる犠牲は禮法れいほうがっし、諸衞府え ふの人々も手數てすうが省けることであらう。