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37 天神地祇に賽報するの勅 仁明天皇(第五十四代)

天神てんじん地祇ち ぎ賽報さいほうするのみことのり(嘉祥元年七月 續日本後紀

頃者、太宰府進白龜。撿之圖典、實合大瑞。自非神明靈應之化、豈獨致希代之貺。宜奠幣五畿內七道諸國天神地祇、賀彼賽報。

【謹譯】頃者さきごろ太宰府だざいふより白龜はっきすすむ。これ圖典ずてんけんするに、じつ大瑞たいずいかなふ。神明しんめい靈應れいおうにあらざるよりは、あにひと希代きたいたまものいたさんや。よろしく五畿內きない・七どう諸國しょこく天神てんじん地祇ち ぎ奠幣てんぺいし、賽報さいほうすべし。

【字句謹解】◯頃者 最近の意 ◯太宰府 筑前ちくぜんのくに御笠郡みかさごおり太宰府だざいふむらにあり、西海道さいかいどうこくとう總管そうかんし、兼ねて外寇がいこうを防ぎ、外交の事をつかさどる ◯圖典 吉凶きっきょう判斷はんだんえがいてある書 ◯大瑞に合ふ 大吉にあたる ◯神明靈應の化 神々が吉事きちじあたへようとして、その證據しょうこに白いかめをこの世につかわしたこと ◯希代の貺 世にも珍らしい賜物たまものの意 ◯奠幣 幣帛へいはくたてまつつて神祇じんぎにいのること ◯賽報 神祇じんぎにおれいのために參詣さんけいして祭る意。

〔注意〕この種の信仰は詔勅しょうちょく史上すこぶる多くはいする。ぎに一例をげよう。

(一)山科やましな嵯峨さ が大原おおはら深草ふかくさとう山陵さんりょう祥瑞しょうずいを告げたてまつるの宣命せんみょう(文德天皇嘉祥三年十月、文德實錄)

【大意謹述】最近に九州の太宰府だざいふから白色はくしょくかめを捕へて朝廷に獻上けんじょうしたものがある。これを吉凶きっきょうの記してある書物つて調査すると、この上もない大吉だといふことが書いてある。ちん御代み よにこの大吉をあたたまふのは、諸神しょしんが國民の誠心まごころに感ぜられたに相違ない、それでなくてどうして、この種の世にも珍らしい賜物たまものを授けられようか。早速、京師けいし周圍しゅうい及び各地方の天神てんじん地祇ち ぎ幣帛へいはくたてまつり、感謝の意を致す祭事さいじを行はなくてはならない。