24-5 陸奥國より黄金を出せる時下し給へる宣命 聖武天皇(第四十五代)

陸奥むつのくにより黄金こがねいだせるときくだたまへる宣命せんみょう(第五段)(天平勝寶元年四月 續日本紀

辭別、大神宮諸神多知爾御戸代奉、諸祝部治賜。又寺寺墾田地許奉、僧綱衆僧尼敬問治賜、新造寺可成官寺成賜。大御陵守仕奉人等一二治賜。又御世御世天下奏賜、國家護仕奉勝在臣多知乃侍所爾波、置表與天地共、人不令侮不令穢、治賜部止宣大命、衆聞食宣。

【謹譯】こときてりたまはく、大神おおみかみみやはじめてもろもろかみたちに御戸代みとしろたてまつり、もろもろ祝部ほうりおさめたまふ。また寺寺てらでら墾田はりたところゆるしまつり、僧綱ほうしのつかさはじめてもろもろ僧尼ほうしあまいやまおさめたまひ、あらたにつくれるてらの〔おおやけでらとなすべきは官寺おおやけでらとなしたまふ。大御陵おおみはかつかへまつるひとどもひとりふたりおさめたまふ。また御世み よ御世み よあたりてあめしたもうしたまひ、國家みかどつかへまつることすぐれたるおみたちのはべところには、しるしきて天地あめつちともに、ひとあなどらしめずけがさしめず、おさめたまへとりたまふ大命おおみことを、もろもろきこしめさへとる。

【字句謹解】◯辭別きて 言葉を別にしてとの意、本詔ほんしょうの主意は以上で終つたので、今後はそれに附屬ふぞくした內容を告げるから、かう言はれたのである ◯大神の宮 伊勢の皇大こうたい神宮じんぐうのこと ◯御戸代 神の御稻おんいねを作る料田りょうでんのこと ◯祝部 神社じんじゃして神に奉仕するのを職とする人。本來は禰宜ね ぎ次位じ いにあるものだが、ここでは禰宜ね ぎ神主かんぬし總稱そうしょうである ◯墾田の地許しまつり 開墾かいこんして田とする土地を占有することを許したてまつる意 ◯僧綱 各寺かくじに置かれたそうの監督職のこと、所謂いわゆるこうとして知られてゐる上座じょうざ寺主じしゅ都維那と い な總稱そうしょう ◯寺の寺となすべきは 一本には「寺の官寺おおやけでらとなすべきは」とある。◯官寺 經濟けいざい方面を朝廷から支給される寺 ◯大御陵守り仕へまつる人 天皇御陵ごりょうに奉仕する人々の意 ◯天の下奏したまひ 天下のまつりごとを執る人のこと、攝政せっしょう關白かんぱくその他の義 ◯侍る所 墓地のこと、死後その場にとどまつて朝廷を守護する意である ◯表を置きて 墓標を立てて ◯天地と共 天地と共に今後永久にの義。

【大意謹述】特にことばを別にして、改めて次の諸事を告げる。今囘こんかい吉祥事きっしょうじの記念として、伊勢の皇大こうたい神宮じんぐうを始め各地方にある神社じんじゃ御料田ごりょうでんをささげ、一切の神職しんしょく從事じゅうじする者の收入しゅうにゅう增加ぞうかさせる、又、諸地にある寺々には將來しょうらい開拓出來る豫想よそうのつく土地を所有することを許し、僧侶そうりょの監督を始め、ことごとくの僧尼そうにをこの上共に尊敬し、收入しゅうにゅうさせ、あたらしく造る寺で經濟けいざい方面を朝廷にあおぐ必要のあるものは、その願ひ通りにする。御代み よ々々の天皇御陵ごりょうに奉仕する者共ものどもも一二人は生活を向上させよう。更に御代み よ々々その當時とうじに於いて天下の政治にあずかり、朝廷の守護としてこうの多かつた諸臣の墓地には、特別な墓標を立て、天地のあらん限り永久に、人々から尊敬の念を失はしめず、けがさせることなく、よく保護し、時には地位ものぼせると大御言おおみことを、神佛しんぶつ及び一同の方々かたがたきこされるやうにと告げる。