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13 祈雨の詔 元明天皇(第四十三代)

祈雨き うみことのり和銅七年六月 續日本紀

頃者陰陽殊謬、氣序乖違、南畝方興、膏澤未降。百姓田囿、往往損傷、宜以幣帛奉諸社、祈雨于名山大川。庶致嘉澍、勿虧農桑。

【謹譯】頃者このごろ陰陽いんようことあやまり、氣序きじょ乖違かいいし、南畝なんぽまさおこり、膏澤こうたくいまらず。百せい田囿でんゆう往往おうおうにして損傷そんしょうす。よろしく幣帛へいはくもっ諸社しょしゃたてまつり、あめ名山めいざん大川たいせんいのるべし。ねがわくば嘉澍かじゅいたし、農桑のうそうすることなからん。

【字句謹解】◯頃者 近頃といふ程の意 ◯陰陽殊に謬り 陰陽いんようの調和が特にみだれる ◯氣序 氣候きこうの順序 ◯乖違 一定の順にそむきたがふこと ◯南畝 南方の日當ひあたりのよいはたけ、これは『詩經しきょう』にある語で、一般に田畑でんばたを意味する ◯膏澤 雨のこと、土地をうるほすからかう言つたのである ◯田囿 田のこと ◯幣帛を以て諸社に奉り かみに何事かをいのる時には幣帛へいはくを神にたてまつるので、神にたいして自分の誠心まごころを告げることを意味する。これと共に神戸かんべたもうたり、くらいのぼらせられたりすることが多い ◯嘉澍 時に適した雨 ◯農桑 五こくくわなどの農產物のうさんぶつ

〔注意〕詔勅しょうちょく史上このたぐいのものは非常に多くある。殘念ざんねんながら、一々例をげられない。本篇では各天皇の時代により、特に主要なものを時々にかかげることにした。

【大意謹述】近頃、陰陽いんようの調和が特にみだれ、氣候きこうの順序が一定せず、田畑でんばたに作物が成長する時期になつても、土地をうるほす雨は一向に降らないで、農夫のうふ田畑でんばた諸處しょしょおおいに損害をこうむつてゐる。ゆえ今囘こんかい諸社しょしゃ幣帛へいはくたてまつつて各地方の名高い山々や大川おおかわに雨をいのるがよい。一同が誠心まごころを以て神々にいのるならば、必ず神もそれに感應かんのうし時にふさはしい喜びの雨を降らせ、農產物のうさんぶつを損ずるやうなことは決してないであらう。