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9 僧尼を諭し給へる勅 天武天皇(第四十代)

僧尼そうに諭さとたまへるみことのり(八年十月 日本書紀

凡諸僧尼者、常住寺內、以護三寶。然或及老或患病。其永臥狹房、久苦老病者、進止不便、淨地亦穢。是以自今以後、各就親族及篤信者、而立一二舍屋于間處、老者養身、病者服藥。

【謹譯】およ諸びもろもろ僧尼そうには、つね寺內じないじゅうし、もって三ぽうまもる。しかるにあるいおいおよび、あるいやまいうれふ。なが狹房きょうぼうし、ひさしく老病ろうびょうくるしむものは、進止しんし不便ふべんにして、淨地じょうちまたけがる。ここもっ自今じこん以後い ごおのおの親族しんぞくおよ篤信者とくしんじゃきて、一二の舍屋しゃおく間處かんしょて、老者ろうしゃやしなひ、病者びょうしゃくすりふくせよ。

【字句謹解】◯常に寺內に住し 僧尼そうにが一生寺院から離れて俗家ぞっけとどまることを許されなかつたのは、『僧尼令そうにれい』に「およ僧尼そうには寺院にるにあらざれば、別に道場を立て、しゅうあつめて敎化きょうか云々うんぬん」と規定してあるからで、本勅ほんちょくはこの規定をゆるめられたことになる ◯狹房 きょうこう反對はんたい、せまい一室のこと ◯進止不便 平常の立居たちい振舞ふるまい差支さしつかえがある意 ◯淨地 寺院の內部にはほとけが安置されてゐるので淨地じょうちつた ◯篤信者 特に厚く佛敎ぶっきょうを信仰する人々 ◯舍屋 小家しょうかのこと ◯間處 近隣に家のないしずかな場所。

【大意謹述】僧尼そうにことごとくは僧尼令そうにれいの規定通り、平常いつでも寺院の內に生活し、厚くぶつほうそうの三ぽうを守護しなければならないとされてゐる。しかるに中には非常に老齡ろうれいに達した者や、年齡ねんれいはさほでなくとも病氣びょうきに苦しむ者もある。永い間せまい一室にして、老衰ろうすい又は病苦びょうくなやむことの多い者は、平常の動作にも差支さしつかへ、一方からは御佛みほとけのゐますきよい場所をけがすことにもなる。ゆえに今後その人々は親戚の家にくなり、特に佛心ぶっしんにあつい人々に就いて、一二の小屋しょうおく附近ふきんの人々の迷惑にならない場所に建て、そこで老年者はしずかに養生ようじょうし、病人はくすりを快くふくするやうにせよ。