67-1 世界大戰ニ就テ平和克復ノ大詔 大正天皇(第百二十三代)

世界せかい大戰たいせんつい平和へいわ克復こくふく大詔たいしょう(第一段)(大正九年一月十日 官報

【謹譯】ちんおもフニ、今次こんじ大戰亂だいせんらんハ、兵戈へいかねんわたリ、世界せかい聳動しょうどうセシメタルモ、聯合れんごうしょ友邦ゆうほう勇奮ゆうふん努力どりょく威烈いれつリ、戰氣せんきそう平和へいわまったふくスルニいたリタルハ、ちんはなはタ懌よろこフところナリ。

【字句謹解】◯今次ノ大戰亂 今囘こんかい大戰爭だいせんそうの意で、いふまでもなく世界大戰たいせんを指されたもの ◯兵戈五年ニ彌リ 兵亂へいらんが五年間も續びつづいた意、一九一四年七月二十七日から、一九一八年十一月に至つたからこのおおせがあつた。〔註一〕參照 ◯聳動 耳目じもくそびえしめる意 ◯聯合諸友邦 聯合れんごうしてドイツ軍にあたつた諸國、主としてイギリス・フランス・イタリイ・アメリカなどのこと ◯勇奮努力 勇敢に懸命にたたかふこと ◯威烈 威力のこと ◯戰氣一掃 戰時せんじ氣分きぶんを全くはらひ除く ◯全ク復スル すつかり平和となつて昔の樣子ようすに復する ◯懌フ 滿足まんぞくに考へられる。

〔註一〕世界大戰ノ原因 今、その特徵とくちょうの二三をざつとくにとどめる。その(第一)は戰爭せんそうの大規模だつたこと、(第二)は新武器の發明はつめい、(第三)は戰禍せんか激甚げきじんである。

(第一)西部及び東部戰線せんせんに於ける兵力は、ドイツはじつに千二百萬人まんにん、オウストラリヤは千萬人、ロシヤは八百萬人、フランスは七百萬人、イギリスは六百萬人をついやし、最後の一年間に參加したアメリカ合衆國ですらも二百萬人近くも戰線に派遣したとつたへられる。これらの諸國が費した軍費合計は六千憶えんで、これをナポレオンのロシヤ侵入當時とうじの五十萬人、一八六六年の普墺ふつおう戰爭せんそうの兵員各四十まん、一八七〇年の普佛ふふつ戰爭せんそうのドイツ側五十萬、フランス側三十萬、日露にちろ戰爭せんそう兩軍りょうぐん合計百まん、日本の軍費總額そうがく二十憶えんせば、この大戰たいせんの大規模は判明しよう。

(第二)ドイツ軍の口径こうけい四二サンチほう、フランス軍の同五二サンチ砲、ドイツの長距離砲・毒ガス、イギリスのタンクなどの發明はつめいがあり、飛行機・飛行船・潜航艇せんこうていは自由に空海くうかいを飛びまわつた。

(第三)この大戰たいせんつていくまん生靈せいれいを犠牲にし、いく千憶の財貨を消費し、幾萬いくまん方里ほうり林野りんや荒廢こうはいせしめたのみでなく、じつに世界第一流の地位にあつたハブスブルグ家・ロマノフ家・ホウヘンツオルレン家が滅亡したのだつた。

【大意謹述】つらつら考へるのは、今囘こんかいの世界大戰爭たいせんそうは、約五年間諸方面に兵戈へいかまじへられ、全世界を非常な恐怖におとしいれたが、ドイツその他を敵にした聯合國れんごうこく軍が勇敢に懸命にたたかつた結果、の威力により戰氣せんきことごとく地上から、はらひ去り、全く昔通りの平和にふくすることが出來た。これちんが最も滿足まんぞくとするところである。