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63-2 韓國併合ニ付キ下シ給ヘル詔書 明治天皇(第百二十二代)

大日本詔勅謹解3 軍事外交篇

韓國かんこく併合へいごうくだたまヘル詔書しょうしょ(第二段)(明治四十三年八月二十九日 官報

【謹譯】爾來じらいときルコト四ねんゆうあいだちん政府せいふ銳意えいい韓國かんこく施政しせい改善かいぜんつとメ、成績せいせきまたルヘキモノアリトいえどモ、韓國かんこく現制げんせいなおいま治安ちあん保持ほ じまっとうスルニラス、疑懼ぎ くねんつね國內こくない充溢じゅういつたみやすんセス、公共こうきょう安寧あんねい維持い じ民衆みんしゅう福利ふくり增進ぞうしんセムためニハ、革新かくしん現制げんせいくわフルノべかラサルコト瞭然りょうぜんタルニいたレリ。

【字句謹解】◯爾來 その後、すなわ日韓にっかん協定きょうていのち ◯時ヲ經ルコト四年有餘 日韓協定は明治三十八年十一月十七日に行はれ、詔書ほんしょうしょは四十三年八月二十九日に發布はっぷされたのだから、の間に四年あまりの年月ねんげつが流れた ◯銳意 心を緊張して事にしたがふ ◯施政ノ改善 政治を實際じっさいほどこし、下民かみん幸福こうふくを計る方法を改めなほす ◯現制 現在の政治制度 ◯治安ノ保持 國が治まり民の安堵あんどを保つ意 ◯疑懼ノ念 政府の方針に信用を持ち得ないこと ◯充溢 ちあふれる ◯民其ノ堵ニ安セス 國民は政府を信賴しんらいして各自の生業せいぎょう懸命けんめいになることが出來ない ◯公共ノ安寧 社會しゃかい各方面の安全、安寧あんねいは國民がやすんじて國がよく治まること ◯福利 有形ゆうけい無形むけい利益りえき ◯革新 現在の弊風へいふうを一切あらためる意 ◯瞭然 明白なこと。

〔注意〕韓國かんこく併合へいごうかんする勅語ちょくごは、

(一)伊藤いとう博文ひろぶみちょうスルノ勅語ちょくご(明治四十二年十一月二日、官報)(二)李王りおう冊立さつりつ詔書しょうしょ(明治四十三年八月二十九日、官報)(三)こう李熹り き優遇ゆうぐう詔書しょうしょ(明治四十三年八月二十九日、官報)(四)朝鮮ニ下シ給ヘル詔書(明治四十三年八月二十九日、官報)(五)韓國かんこく併合へいごうニ付キ總理そうり大臣かつら太郞たろうニ下シ給ヘル勅語(明治四十三年八月二十九日)

などが詔書ほんしょうしょがいにある。

【大意謹述】その後今日こんにちに至るまで、四年あまりの年月ねんげつた。この間にちんの政府は懸命けんめいになつて朝鮮に於ける政治の實際じっさい方面を改めて善導ぜんどうし、その成績・效果こうか顯著けんちょではあつたが、何といつても現在朝鮮の政治制度は未發達みはったつ狀態じょうたいにあり、國家を治め民をやすんずるのには不十分である、けだし國內には政府の方針に心から信用を置かない者が多く、國民一般もまた政府を信賴しんらいしきつて各自の生業せいぎょういとなむとまでにはつてゐない。くの如き樣子ようすであるから、一般の民をよく治め、やすんじて各々職に就かしめ、國民の有形・無形の利益りえき增進ぞうしんするには、どうしても現在の政治制度を根本から改め、一切の弊風へいふうを除かなければならないと明白に判つて來た次第である。

【備考】朝鮮の最大弱點じゃくてんは、國家それ自身が、獨立どくりつを確保してゆくことが出來ない上にあつた。したがつてその態度を二三にし、東洋全局の平和維持をおびやかすロシヤ及び舊式きゅうしき遠交えんこう近攻きんこう政策を執る支那し ななどと往々おうおう手を握り、國政改革の方は、まるで問題とせぬところにあつた。民衆の方でも、みずから進んで國の富强ふきょうつとめようとするてんに於て、到らないてんがあつたと同時に、始終、壓制あっせい治下ち か苦吟くぎんしたのである。それにつれて、國內に於ける不安・動搖どうよう氣味き みが容易に去らないのみならず、日本の東洋平和尊重の意味、またその當然とうぜんの任務・使命を理解しないで、海牙ヘエグの平和會議かいぎへ韓國政府から密使みっしを送つたり、あるいは前韓國統監とうかん伊藤博文を暗殺した安重根あんじゅうこんのやうな人間も飛び出した。以上の如き有樣ありさでは、朝鮮の平和確立はがたい。明治天皇が「革新ヲ現制ニ加フルノ避クヘカラサルコト瞭然りょうぜんタリ」とおおせられたのは、まさにその必要の切迫を指摘されたのであると拜察はいさつする。