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62-2 米國艦隊來航ニ付キ司令官「スベリイ」ニ下シ給ヘル勅語 明治天皇(第百二十二代)

米國べいこく艦隊かんたい來航らいこう司令官しれいかん「スベリイ」ニくだたまヘル勅語ちょくご(第二段)(明治四十一年十月十三日)

【謹譯】合衆國がっしゅうこく傳來でんらい關係かんけいタル輯睦しゅうぼく親善しんぜんちんもっと重要じゅうようところタリ。ますます兩國りょうこく友好ゆうこう牢固ろうこニシ、もっ善隣ぜんりん和好わこう聯繫れんけい不磨ふ まナラシムルハ、ちん不易ふえき企望きぼうタルコト、將來しょうらいなお旣往きおうごとクナルヘシ。ちんけいしょくスルニ、此意このい大統領だいとうりょういたサムコトヲもっテス。ちんけい前途ぜんと航程こうてい依然いぜん平安へいあんナラムコトヲいのル。

【字句謹解】◯輯睦 やはらぎむつまじくする ◯牢固 固くてゆるがぬ事 ◯善隣 隣國りんごくしたしむ義 ◯和好 やはらぎ仲よくする ◯聯繫 結びつけ、つなぐ事 ◯不磨 ちず、すり切れない意 ◯不易 かわらぬこと ◯企望 希望に同じ ◯航程 航路に同じ。

【大意謹述】在來ざいらい、日本がアメリカ合衆國と結んで來たむつまじい關係かんけい親善しんぜんの間柄は、ちんが最も大切に思ふところである。兩國りょうこく益々ますますその友好を固め、その間に於ける美しいよしみを不朽ふきゅうなものとしたいといふのが朕の始終の希望である。將來しょうらいまた過去に於ける如く、親しい交情こうじょうを永くつづけてゆきたい。朕はけいに向ひ、この事を大統領につたへられんことを望む。朕は卿の航路安らかに、幸福こうふく多からんことを心から祈る。

【備考】世には、日米間によこたはる太平洋を不太平洋だといふものもある。それは、少しく極端な言葉だ。無論、太平洋の波は、必ずしも、おだやかだとはへまい。けれども、太平洋をして何處迄どこまでも、不太平洋たらしめぬやう、力を致すべきは、日米兩國りょうこくである。それは相互の絕對ぜったい責任とはねばならぬ。本勅ほんちょくの上に示された明治天皇思召おぼしめしまたここにあると拜察はいさつする。

 ただここに一げんけ加へたいことは、日本が如何い か絕對ぜったい平和をこいねがふにしても、正義を曲げて迄、平和に終始しようといふのではない。現實上げんじつじょう、日本は、威嚴いげんある平和を欲求する。勢力平衡上へいこうじょうに起つ平和を重んずる。威嚴いげんなき平和、力の平衡へいこうの上に起たぬ平和は、我等の望むところでない。