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54-2 改訂條約實施ニ付キ下シ給ヘル勅語 明治天皇(第百二十二代)

改訂かいてい條約じょうやく實施じっしくだたまヘル勅語ちょくご(第二段)(明治三十二年六月三十日 官報

【謹譯】ちん忠實ちゅうじつこうほうスルニあつ臣民しんみんノ、ふかちんたいシテ開國かいこく國是こくぜ恪遵かくじゅんシ、億兆おくちょうこころヲ一ニシテ遠人えんじんまじわリ、國民こくみん品位ひんいたも帝國ていこく光輝こうき發揚はつようスルニつとメムコトヲ庶幾こいねがフ。

ちん在廷ざいてい臣僚しんりょうハ、ちんため新條約しんじょうやく施行しこうスルノせきにんシ、百官ひゃっかん有司ゆうしちょくシ、愼重しんちょう措置そ ち中外ちゅうがい臣民しんみんヲシテひとシク惠澤けいたくケテうらみナカラシメ、もっ列國れっこく和好わこう永遠えいえん鞏固きょうこナラシメムコトヲセヨ。

【字句謹解】◯忠實公ニ奉スル 心から忠誠ちゅうせいに厚く、私情を後にして第一に日本國家のおんめにつくすこと ◯開國ノ國是 國を開いて外國人と交際する政府の方針 ◯恪遵 よくしたがつて守る ◯億兆 國民一般 ◯遠人 外國人のこと ◯國民ノ品位 大國民だいこくみんとしてはずかしくない修養しゅうようをつんだ品性・人格のこと ◯在廷ノ臣僚 政府にある大臣及び各官吏かんり ◯飭シ 命令していましめる ◯愼重措置 態度をつつしみ深く、萬事ばんじ遺漏いろうなく行ふ ◯惠澤ヲ享ケテ 新條約を實行じっこうする事から各種の恩澤おんたくけること ◯和好 親交の意。

【大意謹述】ちんは、心から忠義ちゅうぎに厚く、國家にほうずる心の深い我が臣民しんみんが、深く朕の意をたいして國を開いて外國と交易するやうになつた政府の方針をよく守り、國民が同じ心で外國人と交際し、大國民だいこくみんとしての敎養きょうようある國民性を保ち、我が帝國の光を擴大かくだいする事に努力するやう切望する。

 又、朕の政府にある大臣及び大官たいかんに以下の事を告げる。汝等なんじらは朕が國民の幸福こうふくを目的として新條約しんじょうやく締結ていけつ實行じっこうするに至つた責任を負ひ、各部下をいましめ、態度をつつしみ、深く萬事ばんじ遺漏いろうなく行つてほしい。そして我國に居住する日本人・外國人の區別くべつなく共に新條約からくる恩澤おんたくを受けて何の不平もなからしめ、諸外國が日本にたいする親交を、永久に强く確かにするやう心から望まなければならない。

【備考】明治天皇が外人にまじわるについて、「品位ひんいたもチ」とおおせられたのは、大國民だいこくみん氣品きひんを養ひ、歐米人おうべいじんに敬愛の心を起さしめることが肝腎かんじんだといふことを敎示きょうじなされたものと拜察はいさつする。日淸にっしん戰爭前せんそうぜんの日本は、歐米おうべいから東洋の一小國しょうこくと見なされてゐた。それが戰勝せんしょうにより、一躍して世界の一强國きょうこくと見られるに至つた。ここ歐米人おうべいじん對日たいにち態度の上に大きい變化へんかがある。日本それ自身は、實質的じっしつてきに世界の一强國きょうこくたるの力量を日淸にっしん戰爭前せんそうぜんに、もう備へてゐた。したがつて歐米おうべい對日たいにち態度の變化へんかは、必ずしも、光榮こうえいでもなく、名譽めいよでもない。それは當然とうぜんすぎる事だ。けれども歐米おうべいが新しく日本を認識し始め、條約上じょうやくじょう對等たいとうの白人優越主義を打破り、進んで、アジヤの盟主めいしゅとしての日本の地位を鞏固きょうこにしてゆかねばならなかつた。それには、何をいても、國民の品位を高めてゆく必要がある。かしこくも、明治天皇は、ここ御心みこころを注がれ、國民全體ぜんたい敎訓きょうくんなされたのであつた。