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44-6 陸海軍軍人ニ下シ給ヘル勅諭 明治天皇(第百二十二代)

陸海軍りくかいぐん軍人ぐんじんくだたまヘル勅諭ちょくゆ(第六段)(明治十五年一月四日 法規分類大全)

【謹譯】 ちん汝等なんじら軍人ぐんじん大元帥だいげんすいナルソ。サレハちん汝等なんじら股肱ここうたのミ、汝等なんじらちん頭首とうしゅあおキテソ、したしみとくふかカルヘキ。ちん國家こっか保護ほ ごシテ上天じょうてんめぐみおうシ、祖宗そそうおんむくイマヰラスルコトヲルモサルモ、汝等なんじら軍人ぐんじんしょくつくストつくササルトニルソカシ。くに稜威みいずふるハサルコトアラハ、汝等なんじらちんうれいともニセヨ、あがリテえいかがやカサハ、ちん汝等なんじらほまれともニスヘシ。汝等なんじらみなしょくまもリ、ちんト一しんニナリテちから國家こっか保護ほ ごつくサハ、くに蒼生そうせいなが太平たいへいさいわいケ、くに威烈いれつおおい世界せかい光華こうかトモナリヌヘシ。

【字句謹解】◯汝等軍人 上下しょうか士卒しそつ區別くべつなく軍人全體ぜんたいを指したもの。更に現代からかいすれば、現役・後備・豫備よ びの一切を含ませたものとしても差支さしつかえない ◯大元帥 兵馬へいば大權たいけん統帥とうすいする最高の地位にある役の意 ◯股肱ト賴ミ 手足のやうに臣下しんか信賴しんらいされること ◯頭首ト仰キテ 軍人一般は天皇元首げんしゅとしてあおたてまつる意 ◯其ノ親 天皇と軍人との間に於ける親愛の情 ◯國家ヲ保護シテ 國家を安全に守ること ◯上天ノ惠ニ應シ 上天じょうてんは漠然とした天の意ではなく、天照大御神あまてらすおおみかみのことであることは前に說述せつじゅつした。これを區別くべつしないと、日本精神せいしんの特殊性を見のがすことになる。大御神おおみかみ皇孫こうそんに長くこの國を統治せよと御命令になつた。その特別の恩澤おんたくおうたてまつる意 ◯我カ國ノ稜威 稜威みいずは皇室の强くきびしい威勢いせいのことで、國威こくいかいしても不可ではない ◯振ハサル 盛大に國威こくいを內外にかがやかし得ない ◯我カ武維レ揚リ これは注意を引き起すための用語、我が國の武名ぶめいを四方に發揚はつようすること ◯其ノ榮 そのは我が國家の代名詞、えい光榮こうえい隆昌りゅうしょうの意 ◯其ノ譽ヲ偕ニス 君臣くんしんが同じやうに名譽めいよを一にすること ◯蒼生 一般の國民 ◯威烈 國家の威光いこうさかんな意 ◯世界ノ光華 世界列國中れっこくちゅうで最もかがやかしい存在。

【大意謹述】ちんはここにあらためて次のことを汝等なんじらに告げる。朕は汝等軍人全部を統率する大元帥だいげんすいである。ゆえに朕が汝等軍人を朕の手足として信賴しんらいし、汝等は朕を元首げんしゅとしてあおいだ時に、朕と汝等との親愛の情は一層深められる道理である。朕が我が日本國家を安全な立場に置くやうに努力し、天照大御神あまてらすおおみかみ神勅しんちょくしたがたてまつり、又御代み よみよ天皇厚恩こうおんむくいまゐらせることをるのもないのも、全く汝等軍人が軍人としての本質を理解し、その職に忠實ちゅうじつであるかいなかに關係かんけいするのである。し我が國威こくいを內外にふるひ起すことが出來ない場合があつたとすれば、汝等は朕と共に心痛し、恢復かいふくこころざさなければならない。我國の武威ぶ い益々ますます諸方面にひろがり、日本の榮譽えいよを海外に輝やかすことが出來たならば、朕は汝等と一緒に喜んで、この名譽めいよを共にする。汝等軍人が一人ものこらず各自にあたへられた部署を守り、朕と同心どうしんたいになつて我が日本の安全を保つことに努力したならば、我が國民はそのために永久に平和の幸福こうふくを受け、日本の盛んな武威ぶ いは、世界各國中の最も華々はなばなしい存在として、おおいにその價値か ちを全世界に認めさせる結果になるであらう。

【備考】大元帥だいげんすいであらせられる陛下が、右の勅語ちょくごに於て、「ちん終生しゅうせい將卒しょうそつ苦樂くらくともにするぞ」と力强くおおせられてゐることは、將卒しょうそつ精神せいしんを引締め、一だい光明こうみょうあおぐ如くかんぜしめた事と拜察はいさつせられる。陛下は以上の御言葉おことば日淸にっしん日露にちろりょう戰爭せんそうの際に、みずか實行じっこうせられ、戰地せんちにある將卒しょうそつ勞苦ろうくを一日も忘れられた事がなかつた。陛下みずか戰地せんちにあらせらるる如く、質素しっそ單純たんじゅん剛健ごうけんな生活を送られた。すなわち陛下は、何事をおおせらるるにつけても、善事ぜんじ美事び じは、率先、これを實行じっこうして、軍隊にはんを示されたのである。かうした大元帥だいげんすいいただ將卒しょうそつ歡喜かんきは大きく、つ深い。陛下を中心にすべての將卒しょうそつの心が一つになり、國防こくぼうに、國光こっこう發揮はっきに、各自がいそしんだのは、一に大元帥だいげんすい陛下の御敎示ごきょうじによる。