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18-3 惠美押勝誅伐の詔 淳仁天皇(第四十七代)

惠美押勝えみのおしかつ誅伐ちゅうばつみことのり(第三段)(天平寶字八年九月 續日本紀

復勅、惡多末不、諸氏氏人等乎毛進都可方須己止不在阿利都。是以與利仕奉良武乃末仁末仁進用賜

【謹譯】またのりたまわく、きたなかたましきやっこまつりごともとりてもうしたまふことをもつて、諸氏うじうじの氏人うじびとどもをもすすめつかはすこと、ことわりごともあらずありつ。ここもっいまよりのちは、つかまつらむさまのまにまにすすたもたまはむ。

【字句謹解】◯惡く奸き奴 仲麻呂なかまろを指す ◯政治の柄を執りて 政權せいけんを自己の手に握る ◯諸氏氏人 各うじぞくしてゐる氏人うじびとうじとは上古じょうこの血族團體だんたいで、祖を等しくした大家族の意。中臣なかとみ齋部いんべ藤原ふじはらなどは大氏おおうじである ◯理の如もあらず 誰が見ても正しいといふ工合ぐあいにはかず、その間に不公平があつた ◯仕へ奉らむ相のまにまに 今までは仲麻呂なかまろ專横せんおうにより不公平があつたが、今後は彼がゐないので、人々の奉仕の實績じっせきによつてその進退を決し、道理に合ふ政治を行はうとのこと。

【大意謹述】た神々にたいして告げたてまつることがある。過去に於いてはあの心の曲つた惡人あくにん仲麻呂なかまろ政權せいけんを握つて事毎ことごと奏上そうじょうしたので、諸うじ氏人うじびとなどにも進退の間に道理に合はず、不公平なこともあつた。しかし現在以後はもう彼はゐないから、奉仕する實績じっせきしたがつてそれらを定め、決して道理に合はないことは行はないつもりである。

【備考】仲麻呂なかまろにより混濁こんだくせられた政治を一新して、正理せいりによつてゆかうとせらるる思召おぼしめしここに述べられたことは當時とうじの天下のために喜ぶべきであつた。本來朝廷の官吏かんりの進退は、一にその人格・手腕兼備けんびのものを昇進せしむべき筈であつたのを、一時、仲麻呂なかまろが之を妨害したのである。けれども情弊じょうへいしんここ正理せいり蘇活そかつせんとするに至つた。