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16 射騎田を六衞府に置くの勅 孝謙天皇(第四十六代)

射騎田しゃきでんを六衞府え ふくのみことのり天平寶字元年八月 續日本紀

治國大綱在文與武、廢一不可、言著前經。向來旌勅、爲勸文才、隨職閑要量置公田。但至備武未有處分。今故六衞置射騎田、毎年季冬、宜試優劣以給越群、令興武藝。其中衞府三十町。衞門府、左右衞士府、左右兵衞府各十町。

【謹譯】くにおさむるの大綱たいこうぶんとにあり、一をはいするも不可ふ かなり、げん前經ぜんけいしるし。向來こうらいみことのりあらわし、文才ぶんさいすすむるめに、しょく閑要かんようしたがつて公田こうでん量置りょうちす。ただそなふるにいたつてはいま處分しょぶんあらず。いまゆえに六えい射騎田しゃきでんき、毎年まいねん季冬きとうよろしく優劣ゆうれつこころもっ越群えつぐんたまひて、武藝ぶげいおこさしむべし。中衞府ちゅうえふは三十ちょう衞門府えもんふ左右さゆう衞士府え じ ふ左右さゆう兵衞府ひょうえふおのおのちょうとせよ。

【字句謹解】◯射騎田 射田しゃでんともいふ。王朝時代に射藝しゃげい奬勵しょうれいするため諸衞府え ふて置いた田の事 ◯大綱 すべての基礎となる根本 ◯一を廢する 文武ぶんぶいずれか一方をはいすること ◯前經 けい經文けいぶんの意、すなわ先賢せんけんの手に成る文獻ぶんけん經典けいてんなどの事 ◯向來 先日の意 ◯勅を旌し このみことのりは、『大學寮だいがくりょうとう公廨田くげでんくのみことのり』(天平寶字元年八月、續日本紀)を指したもの、『思想社會しゃかい篇』を參照せよ ◯職の閑要 公職に務める時が長いか短いか、又、それが重要であるかいなかにしたがふ ◯公田 朝廷からたまはる土地 ◯量置 一定の量を規定して置く。〔註一〕參照 ◯處分 ここでは公田こうでんを置くとこを指す ◯六衞 宮中守護の六役所、その名は本勅ほんちょくに見えてゐる ◯越群 一本には「超群ちょうぐん」とある、優勝した團體だんたいのこと。

〔註一〕量置 前の『大學寮だいがくりょう公廨田くげでんを置くのみことのり』には、大學寮だいがくりょうに三十ちょう(一本には二十町)、雅樂寮ががくりょう及び陰陽寮おんようりょうには十町、內藥司ないやくしには八町、典藥寮てんやくりょうには十町と規定されてゐる。

【大意謹述】國を治める上に就ての根本要件は、ぶんとを盛んにすることにある。そのいずれか一方をはいしても、うまく治まるものではないと、昔の聖人の書物に明らかに記してある。先日ちんみことのりして文才ある人々を一層はげますために、公職にある時間の多少、又はその職の持つ重要性にしたがつて區別くべつして、各寮に公田こうでんを授けた。ただを備へる方には未だこの事がない。これは前述した通りぶんのみを奬勵しょうれいし、の方面を輕視けいししたので、國を治める上にはなはだ面白くない。よって今、ちんは宮中守護の六役所のために射騎田しゃきでんといふものを設けることにした。毎年まいねんの冬に各役所から數團すうだんを出して射術しゃじゅつを競ひ、勝つた組がその田からの收穫しゅうかくるやうに規定して、武藝ぶげい奬勵しょうれいの一じょとする。公田こうでんひろさは、中衞府ちゅうえふは三十ちょう衞門府えもんふ、左右の衞士府え じ ふ、左右の兵衞府ひょうえふは各十ちょうづつとする。