読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

66-5 帝都復興ニ關スル詔書 大正天皇(第百二十三代)

大日本詔勅謹解2 道德敎育篇

帝都ていと復興びふっこうかんスル詔書しょうしょ(第五段)(大正十二年九月十二日)

【謹譯】これおもんばかリテ、ちん宰臣さいしんめいシ、すみやか特殊とくしゅ機關きかん設置せっちシテ帝都ていと復興ふっこうこと審議しんぎ調査ちょうさセシメ、成案せいあんあるいこれ至高しこう顧問こもんヒ、あるいこれ立法りっぽうはかリ、籌畫ちゅうかく經營けいえい違算いさんナキヲセムトス。

【字句謹解】◯宰臣 大臣のこと ◯特殊ノ機關 特別の機關きかん。〔註一〕參照 ◯帝都復興 首都を再びさかんにすること ◯審議調査 くはしく調べて相談する ◯成案 出來上つた案 ◯至高顧問ノ府 樞密院すうみついんのこと、國家最高の機關きかんであるからかう言つた ◯立法ノ府 帝國議會ぎかいのこと ◯籌畫 計畫けいかくの意 ◯遺算 手落ち。

〔註一〕特殊の機關 この詔旨しょうし奉體ほうたいして、時の山本內閣は、九月十九日に帝都復興審議かいを設け、二十七日には帝都復興院官制を公布したのである。

【大意謹述】東京市その物にたいするちんの氣持は今述べた通りである。朕はこの首府しゅふ發展はってんを考慮し、帝都を再び盛大にする特別な設備を一刻も早く行ひ、各人が詳細に取調べ、相談するやうにと大臣に命令した。そこで一決した計畫けいかくは、あるいは國家最高の機關きかんたる樞密院すうみついんに提出し、又は各種の法規を決定する帝國議會ぎかいをして賛助さんじょをなさしめ、すべての豫定よてい實行じっこうとにまん一の手落もないやうに出來るだけ愼重しんちょうを持したのである。

【備考】右の勅語ちょくご中にある通りの御趣旨ごしゅしにより、復興院ふっこういんが出來て、著々ちゃくちゃく、その事務を進捗しんちょくさせたが、丁度ちょうど、大正十三年、日本視察に來たノルウエイ出身のフオウト氏(米國南ダコタ州立師範產業大學長)が、東京の姿を見て、記述した一節がある。それは『底知れぬ日本』のうちにおさめられてゐるが、すこぶる日本國民に共鳴した心持こころもちを左の如く述べてゐる。

  私は東京見物を繼續けいぞくした。在來、日本各地距離打算の起點きてんとなつた日本橋地震のために破壞はかいはされなかつたが、火災で銅石どうせき共に損害を受けたあとが、歷々れきれきのこつてゐる。橋上きょうじょうに起つと、市民が如何い かに熱心に前にもして、壯美そうびな帝國を建設しようと努力せるかが分明わ かる。私は幼時、かのカルセエヂ人が、ロオマ人の襲來にたいし一致してこれを防ぐことを記したのをんだが、その一節に男女老幼を問はず、朝から晩迄、汗水たらしながら働き、婦人は貴金ぞく類をとかして武器製作の材料とし、その毛髪を切つて、弓絃ゆみづるに用ひたとあつたのを今もよく記憶してゐる。

  目下の東京は、まさにそれと同樣どうよういきおいを示してゐる。日本國民は最近、經驗けいけんした非常の困難・悲境ひきょうにあつてしかも世界各國の首都にまけないものを再興しようと、不屈ふくつ不撓ふとう精神せいしん發揮はっきしつつある。それは、史上、かつて例を見ない所だ。それから銀座通ぎんざどおりは、遠く煙のたなびける方面へ延長した。前には東京市の第五條通じょうどおり(京都の代表的な街)として、洋風の店がのきをならべてゐたが、大火のため一掃され、今は、トタン、ブリキ屋根のかり小屋がならんでゐる。アメリカ西部の人々は、そんなものは、一夜のうちに出來ると思ふであらうが、決して左樣そ うでない。古說こせつにあるフエニツクスの鳥の如く、東京市は、灰燼かいじんの中から起ちあがつて、より宏壯こうそうな都市を形造らんとしてゐるのだ。(中略)衞生えいせい局長山田氏の談によると、この偉大な事業は、四部にわかつて行はれつつある。(第一)街路水道を構作し、土地測量を行ひ、土地所有者の地域を決定すること、(第二)諸學校の建築、(第三)種々の慈惠じけい病院などの建築、(第四)最近の衞生えいせい設備、すなわちこれである。

  今囘こんかい、大道路が新しく設けられ、古い町は眞直まっすぐになり、ひろくなつた。多數たすうの公園、又はまん一の際に用ふべき避難所をも多く設置する筈である。それから新港しんこう設計に基づき、製造所多き地方には、新しく水路を作らうとしてゐる。その他、一大中央市場、數多あまた慈惠じけい病院・保護所・養育院そのほか、救恤きゅうじゅつ的設備で、大工業市必須のものと久しく感ぜられたものの建設にも、プランを立てた。水道・下水道は最も完全なものを採用するさうで、昭和三年迄に、各部しとしく作業の大部分が實現じつげんされようといふのである。

 以上の記事をんで、復興後の東京を見た人々は、どんな感想をいだくであらうか。またフオウト氏の言を以てあたれりとするであらうか。一こうすべきてんがあらうと思ふ。