65-3 學制頒布五十周年ニ際シ下シ給ヘル勅語 大正天皇(第百二十三代)

學制がくせい頒布はんぷ五十周年しゅうねんさいくだたまヘル勅語ちょくご(第三段)(大正十一年十月三十日)

【謹譯】ちんふか前後ぜんご從事じゅうじ諸員しょいん勞績ろうせきよみシ、さらちん紹述しょうじゅつたいシテ遺訓いくん遵奉じゅんぽうシ、つね中外ちゅうがい時勢じせいさっシテこころ啓發けいはつ成就じょうじゅもちヒ、益々ますますちから敎學きょうがく振興しんこうつくシテ、もっ文運ぶんうん昌明しょうめいはかラムコトヲのぞム。

【字句謹解】◯前後從事諸員 前後して敎育の事にたずさはつた人々 ◯勞績 骨折り ◯朕カ紹述ノ意 ちんが先帝の後をうけつぎこれを伸張しんちょうする意志 ◯遺訓ヲ遵奉シ 先帝ののこしおかれた敎訓をよく守る ◯中外ノ時勢 國の內外の動き ◯啓發 開き進める ◯成就 智德ちとくを完成させる ◯敎學ノ振興 學問や敎育を盛んにする ◯文運 世の中の學術・技藝ぎげい趨勢すうせい ◯昌明 はつきりと明るく、進歩すること。

【大意謹述】過去五十年間にこれ程まで敎育の進展を見たのは、前にも述べたやうに、決して先帝の御努力のみでなく、一般國民の一致協力があずかつて力があつた。ちんはこの意味で、この年月としつき、敎育に從事じゅうじした人々の骨折りと立派な結果とを非常によみする。この上朕が望むことは、朕が先帝の御事業を受けいだ意味を一層よく理解して、先帝ののこされた御敎訓にしたがたてまつり、平常から國の內外の動きに注意して、知識を高め德を完成させることを怠らず、より以上に學問敎育の進歩發展はってんに力をつくし、我が日本の文化に長足ちょうそくの進展を致すやうにして欲しいと思ふ。ここに學制がくせい頒布はんぷ五十年記念祭にあたつて、朕は人々に以上のことを告げ知らせる。

【備考】ここに「中外ちゅうがい時勢じせいさっシテこころ啓發けいはつ成就じょうじゅもちヒ」とおおせられた上に、深い意義がある。思ふに、敎育の最高指導原理としては、敎育勅語があるから、これに準據じゅんきょすればいが、ただ時勢じせいの動きにつれて、その原理を事々じ じ物々ぶつぶつに活かし用ひてゆくには、敎育家の頭の働きを要する。

 敎育に從事じゅうじするものは、このてんからして、敏活びんかつに時勢を知り、きたるべき趨勢すうせいを察知しなくてはならない。すなわち新たに起つてくる問題や事件や、新しく生ずる趣味・嗜好しこう乃至ないし流行などについて、くこれを了解し、勸奬かんしょうすべきことは、之をすすめ、いましむべきことは、之をいましめる。この際、原理を活かし用ひ、どんな時、どんな場合にも、澁滯じゅうたい・固定しないだけの用意があつてほしい。

 更に國際こくさい關係かんけいに注意して、世界の進運しんうんを知ることもまた必要である。今日こんにち極西きょくせいの一部に起つた事は、すぐ極東きょくとう方面へ影響する。同時に、世界の隅々すみずみには、いろいろの新しい事件が刻々起り、見る見るうちに形勢は變化へんかしてゆく、それに向つて、正しく適應てきおうしてゆくには、敎育の最高原理を活かして、時代の目ざめとなるやう、光となるやう、心がけねばならぬ。以上は「中外ノ時勢ヲ察」せよ!と仰せられた御言葉みことばに就て念頭に浮べた感想である。