59-7 戰勝後臣民ニ下シ給ヘル詔勅 明治天皇(第百二十二代)

戰勝後せんしょうご臣民しんみんくだたまヘル詔勅しょうちょく(第七弾)(明治二十八年四月二十二日 官報

【謹譯】戰後せんご軍謀ぐんぼう經畫けいかく財政ざいせい整理せいりハ、ちん有司ゆうし信任しんにんシテもっぱ贊籌さんちゅうせめあたラシムヘシトいえどモ、積累せきるい蘊蓄うんちくもっ國本こくほんつちかフハ、しゅトシテ億兆おくちょう忠良ちゅうりょう臣庶しんしょラサルヘカラス。かちレテみずかおごリ、みだりあなどリ、しん友邦ゆうほううしなフカごとキハ、ちんだんシテラサルところナリ。すなわ淸國しんこくいたっテハ、講和こうわ條約じょうやく批准ひじゅん交換こうかんのちハ、その友交ゆうこうふくシ、もっ善隣ぜんりんよしみいよいよ敦厚とんこうナルヲスヘシ。なんじ有衆ゆうしゅうちんたいセヨ。

【字句謹解】◯軍謀ノ經畫 軍事にかんする種々しゅじゅ計畫けいかく ◯有司 役人 ◯贊籌 遺漏いろうなく手はずをととのへる、さんは君主を輔佐ほ さすること、ちゅうはかる、種々しゅじゅ良策を考へること ◯積累蘊蓄 一歩々々絕えず積み重ねて內容を大きくする ◯國本 國の發展はってんの根本となるもの。この場合は主として國の文化を指す ◯批准 條約じょうやくの案文をその當事國とうじこく主權者しゅけんしゃが承認する ◯敦厚 禮儀れいぎに厚い意。

【大意謹述】戰後に於ける軍事關係かんけいの諸計畫けいかくや財政上の整理に就いては、その方面の專門家を信賴しんらいしていろいろの良策を考へさせるから、このてん一般國民は安心してよろしい。そして一歩々々氣長く、たゆまずに國家發展はってんの基礎となる國の文化を進めつちかふ一に至つては、どうしても無數むすう忠良ちゅうりょうな國民にたよらなければならない。まん戰勝せんしょうに有頂天となり、自分の生活を華美にし、理由なく他國を輕蔑けいべつして、國の友誼ゆうぎを破り、信用を失ふやうな事があつてはならない。現に淸國しんこくたいするにあたり相互の主權者しゅけんしゃが講和條約じょうやくを承認し文書を交換した以上は、あだも憎みも消えたのである。戰前と少しもかわらない氣持で交際を恢復かいふくし、隣國としての友誼ゆうぎが時と共に厚きを加へん事を望まなくてはならない。汝等なんじら臣民しんみんよ、今迄述べた戰勝せんしょうあたつてのちんの意を知り、實現じつげんつとめて欲しい。

【備考】ここおおせられた國本こくほん培養ばいよう!それが何より肝腎かんじんである。國本こくほんつちかふには、國を富ませ、兵を强うすることもよいが、第一義の問題は、何とつても、國の文化を進めることにある。物質上の進歩と精神上せいしんじょう發展はってんを合せ得て、どの國よりも、高度の文化を有することが、やがて國本こくほんつちか所以ゆえんである。

 が、それは、一氣に實現じつげんせられることではなく、徐々につとめ、著實ちゃくじつに勤勉狀態じょうたいつづけてゆくことによつてのみ實現じつげんされる。急がず、あせらず、根强く、どつしりとして、この方面の開拓にあたることが何より效果的こうかてきである。が、それを裏付けてゆくについては、中正ちゅうせい公明こうめいの日本精神せいしんを以てしなければならない。日本精神によつて、すべてを統一するところに、國本こくほん培養ばいようの一大動力がある。