59-1 戰勝後臣民ニ下シ給ヘル詔勅 明治天皇(第百二十二代)

戰勝後せんしょうご臣民しんみんくだたまヘル詔勅しょうちょく(第一段)(明治二十八年四月二十二日 官報

【謹譯】ちんおもフニ國運こくうん進張しんちょう治平ちへいリテもとムヘク、治平ちへい保持ほ じシテ終始しゅうしアラシムルハ、ちん祖宗そそうクルノ天職てんしょくニシテ、また卽位そくい以來いらい志業しぎょうタリ。

【字句謹解】◯進張 張り進む ◯治平ニ由リテ求ムヘク 平和の方法・精神せいしんにより達成する ◯保持 たもつ ◯天職 天皇としての責任 ◯志業 希望と事業。

【大意謹述】ちんは常に日本の國勢こくせいを盛大にすることを忘れたことがない。それを實現じつげんすべく、いつも平和の精神せいしん、方法のもとに進まねばならないと考へてゐた。國際上こくさいじょう始終しじゅう平和を保つて、世界列强れっきょうしてゆく事は朕が祖先からいだ使命・責任であると同時に、卽位そくい以後一貫した事業であり希望でもあつた。

【備考】正義と平和とを重んずることは、日本建國けんこく以來の精神せいしんで、歷代れきだい天皇は、いずれもこの旨を確守かくしゅせられた。勿論もちろん、その平和は、「威嚴いげんある平和」で、屈從くつじゅうを意味する平和でなかつた。正義護持ご じのための平和であつた。この傳統でんとうのもとに、明治に入つてからも、國際こくさい關係かんけい上、平和第一主義に起ち、時によると、外國に幾分讓歩じょうほしても、國家の體面たいめんを損じない限り、平和を保つことに、全力を注いだのである。

 ここおおいだされた御旨みむねは、神武じんむ天皇が、平和と正義とを重んぜられた大御心おおみこころと同じであつて、國際こくさい關係かんけい圓滿えんまんと平和とを持續じぞくしてゆくうちに、國威こくい伸張しんちょうすることを念とせられたのである。