読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

39-3 御注孝經を行ふの制 淸和天皇(第五十六代)

御注ぎょちゅう孝經こうきょうおこなふのせい(第三段)(貞觀二年十月 三代實錄)

於是、當時有識碩德名儒、咸集廟堂恭尋聖義、妙理甚深常情難測、同共嗟服伏請頌傳。侍中安陽縣男乾曜等奏曰、天文昭爛洞合幽微、望卽施行佇光來葉。制曰可。

【謹譯】ここいて、當時とうじ有識ゆうしき碩德せきとく名儒めいじゅみな廟堂びょうどうあつまり、つつしんで聖義せいぎたずぬるに、妙理みょうりはなはふかく、常情じょうじょうはかがたし。おなじくとも嗟伏さふくしてして頌傳しょうでんふ。侍中じちゅう安陽縣あんようけん男乾曜だんけんようとうそうしていわく、天文てんもん昭爛しょうらんほがらかに幽微ゆうびがっす。のぞむらくはすなわ施行しこうし、來葉らいようひかりめんことをと。せいしていわく、なりと。

【字句謹解】◯有識 知識と經驗けいけんとが共に深い人 ◯碩德 德行とくぎょうをつんだ人 ◯名儒 當時とうじ評判な儒者じゅしゃ ◯ ことごとくの意 ◯廟堂 天子の祖先をまつつてある場所、ここでは宮城きゅうじょうの意 ◯聖義 聖人が『孝經こうきょう』で言はうとした意味 ◯妙理 何とも言へない程深い意味 ◯常情にては測り難し 普通一般の知識では十分知り得ない程聖人のふ意味は深い ◯嗟伏 感心して今更それに服する ◯頌傳を請ふ 孝經こうきょう功德こうとくしょうつたへる ◯天文昭爛 聖人の文意ぶんいがこの上もなく明らかで正しいとの形容 ◯幽微に合す 宇宙の最も深い原理と同一である ◯施行 實際じっさいに行ふ ◯來葉に光を佇めん この御代み よに於ける文運ぶんうんの進歩を後世まで耀かがやかす。

【大意謹述】みことのりほうじて、その當時とうじのあらゆる學者宮城きゅうじょうに集つた。知識・經驗けいけん共に深い人、德行とくぎょうをつんだ人、定評のある儒者じゅしゃなどが、愼重しんちょうな態度で聖人の意義を研究すると何とも言へない程の深い意義が考へれば考へる程出て來て、聖人が正しく言はれた內容がどれだけの範圍はんいを指したのだが、普通一般の人々には測り知れなかつた一同は共に有力の學者ではあつたが一ように感激を新しくし、全部が聖人の功德こうとくを今更のやうにたたへ合ひ、これをつたへる事につとめたいと願つた。傳奏役でんそうやく安陽縣あんようけん男乾曜だんけんようなどは、そこで玄宗げんそう御前ごぜんに進み、聖人の文意ぶんいが非常に明らかで正しく、宇宙の根本原理と合致してゐるてんそうし、早速註解ちゅうかいの仕事を進め、この時代の文運を後世にまで輝かしたいと申し上げて、正式に許可を得た。