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37 武藏國多摩郡の節婦眞刀自咩を賞するの勅 仁明天皇(第五十四代)

武藏國むさしのくに多摩郡たまごおり節婦せっぷ眞刀自咩ま と じ めしょうするのみことのり(承和十三年五月 續日本後紀

宜特授位二階、兼終身免同戸田租。

【謹譯】よろしくとくかいさずけ、ねてふるまで同戸どうこ田租でんそめんずべし。

【字句謹解】◯眞刀自咩 『大日本史だいにほんし』には刀自咩と じ めとある、武藏國むさしのくに貞節ていせつ寡婦か ふ日本後紀しょくにほんこうきかん十六、仁明にんみょう天皇承和しょうわ十三年五月二日のくだりに「眞刀自咩ま と じ めは、同郷の刑部廣主おさかべのひろぬしの妻たり。四男三女を生み、二十一年をて、夫すなわち死す。眞刀自咩ま と じ めに居てれいあり、死につかふることのせいの如し。墳側ふんそくを結び、晨昏しんこん悲泣ひきゅうし、歳月さいげつを推移して、終始かわらず、操行そうこうを見るに、節婦せっぷふべし」とあり、このみことのりつづいてゐる ◯位二階を授け 位をニ階段だけ上げる ◯田租 田からの收穫しゅうかくたいする租稅そぜい

〔注意〕前に謹述きんじゅつした「加賀國かがのくに孝子こうし財部繼麻呂たからべのつぐまろ旌表せいひょうせしむるのみことのり」(仁明天皇承和四年十一月、續日本後紀)を參照せよ。

【大意謹述】武藏國むさしのくに眞刀自咩ま と じ めは世にもれな節操せっそうに厚い寡婦か ふで、世の中の模範となる價値か ちが十分にある。今囘こんかい、その寡婦か ふ行爲こういよみし、世の人々にならはさせる目的から、特に位を二階段上げ、一生涯その家の田からの租稅そぜいを免ずることとする。

【備考】これは、極短い勅語ちょくごであるが、節婦せっぷを表彰された上で、天下の女性たちに節操せっそう貞實ていじつを敎へられ、風敎上ふうきょうじょう、大きく一般を自覺じかくせしめ自奮じふんせしめた事と拜察はいさつされる。日本女性の美は、かうした節婦せっぷの上に結實けつじつされたとつてもよいほどで、その眞實心まごころは深く人々を感動せしめなくてはやまない。