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31-1 病を看養し屍を收斂するの勅 平城天皇(第五十一代)

やまい看養かんようかばね収斂しゅうれんするのみことのり(第一段)(大同三年二月 類聚國史)

今聞。往還百姓在路病患、或因飢渇卽致死亡。是誠所司不存格旨、村里無意看養也。

【謹譯】今聞いまきくならく往還おうかん百姓ひゃくせいみちつて病患びょうかんし、あるい飢渇きかつつてすなわ死亡しぼういたす。まこと所司しょし格旨かくしそんせず、村里そんり看養かんようなければなり。

【字句謹解】◯今聞 現在噂によれば ◯往還の百姓 各國の人々の意。往還おうかんは往來する者、百姓ひゃくせいは一般の國民のこと ◯路に在つて 路上で、途上での意 ◯病患し 病のために苦しむ ◯飢渇に因つて 水や食物に不足して ◯所司 その方面にゐる役人 ◯格旨 正しい規則の趣旨 ◯看養 病人を看護する。

【大意謹述】噂によれば、最近諸國を往來する人々が、途上でにはかに病に苦しんだり、水や食物に不足して死ぬ者が少くないとのことである。この不祥事は、じつに各地方の役人が規則の趣旨をそんせず、自己の職務を怠り、他方、各村里そんりの人々が他國人の苦しみに同情し、病苦を看護する意志がなくなつたのを何よりもよく證明しょうめいしてゐる。

【備考】名もなく、功もない無名・貧弱な行路こうろ病者にたいして、大御心おおみこころを注がれたのは、正に聖恩せいおん洪大こうだい、海よりもひろいとはねばならぬ。

 世上せじょう、富みさかえながら、その親戚・知人の病にすら同情せず、あるいはこれを冷淡に見て、物惜ものおしみするものさへもある。このやからは、以上の聖旨せいしたいして、深くぢなければならぬ。