21-1 諸學生の所課を勉勵するの勅 孝謙天皇(第四十六代)

諸學生しょがくせい所課しょか勉勵べんれいするのみことのり(第一段)(天平寶字元年十一月 續日本紀

如聞、頃年諸國博士醫師、多非其才。託請得選、非唯損政、亦无益民。自今已後、不得更然。

【謹譯】如聞きくならく頃年このごろ諸國しょこく博士はかせ醫師い しおおさいにあらず。託請たくせいしてせんるは、ただまつりごとそこなふのみにあらず、またたみえきし。自今じこん已後い ごさらしかることをず。

【字句謹解】◯其の才にあらず 相當そうとうした才學さいがくがない ◯託請 四方八方に自薦じせん運動をする ◯无し 無しと同じ。

【大意謹述】風聞ふうぶんによれば、近年諸國の博士や醫師い しの大部分が學才がくさいてんで過去よりも非常に劣り、四方八方に狂奔きょうほんして運動をつづけた結果、裏面りめんのある種の關係かんけいでそれらのせんに入つた者が想像以上に多數たすうあるとのことである。この事實じじつたんに國の政治の威嚴いげんを地にとすのみでなく、他方では民にあたへる害も少くない。ちんは今後かうした傾向は決して許されないと思ふ。

【備考】この勅語ちょくごはいすると、孝謙こうけん天皇がいかに學問がくもんたいして、熱心であられたかが分明わ かる。前には、貧しい篤學者とくがくしゃを保護することに、特別の思召おぼしめし發表はっぴょうせられたが、今後は、學問に冷淡な癖によい地位のみねらひ、さかんに自薦じせん運動をして、學界の純正をけがさんとするものをおごそかにいましめられてゐる。

 學問は、無論、自己の生活のためばかりにするのではなく、公共に貢獻こうけんする意味をも兼ねてゐる。したがつて、その研究方面に專心せんしんしなくてはならぬ。進歩又進歩、生涯、研究をやめぬとつた熱心さが必要である。この勅語ちょくごは、學問に冷淡で名譽めいよ、利得のみを求むる學者の迷想をさます上に大きい效果こうかがあつたらうと拜察はいさつする。