20 天皇・皇后の御名を冒すを禁ずるの勅 孝謙天皇(第四十六代)

天皇てんのう皇后こうごう御名み なおかすをきんずるのみことのり天平寶字元年五月 類聚三代格)

頃者百姓之間、曾不知禮。以御宇、天皇及皇后等御名、有著姓名者。自今以後、不得更然。所司或不改正、依法科罪。主者施行。

【謹譯】頃者このごろ百姓ひゃくせいあいだかつれいらず。御宇ぎょう天皇てんのうおよ皇后こうごうとう御名み なもって、姓名せいめいあらわものあり。自今じこん以後い ごさらしかることをず。所司しょしあるい改正かいせいせざれば、ほうつてつみせん。つかさどもの施行しこうせよ。

【字句謹解】◯頃者 このごろ、近頃と同じ ◯百姓 一般の國民のこと ◯御宇、天皇 御宇ぎょう大御代おおみよ、時代。ここではの時代に天下を支配されてゐる天皇の意 ◯主る者 の方面の職をもっぱらにしてゐる者 ◯施行 天下に告示して實行じっこうさせる。

【大意謹述】近頃一般國民が非常に禮儀れいぎを知らなくなつたとの風評がある。はなはだしいのになると、その時代に臨御りんぎょされる天皇・皇后などの御名み なのまま自分の姓名として用ゐる者があるらしいが、今更くまでもなく、これは我が國民として大不敬だいふけい相當そうとうする。今後は決してこれを許さず、見のがす役人があれば、その役人も共に法に照して一定の罪とするであらう。當局とうきょくの者はすみやかにこのむねを天下に告示して欲しい。