12 孝順を旌表するの詔 文武天皇(第四十二代)

孝順こうじゅん旌表せいひょうするのみことのり(大寶二年十月 續日本紀

上自曾祖下玄孫、奕世孝順者、擧戸給復、表旌門閭以爲義家焉。

【謹譯】かみ曾祖そうそよりしも玄孫げんそんいたる、奕世えきせい孝順こうじゅんなるものいえこぞりてふくきゅうし、門閭もんりょ表旌ひょうせいしてもっ義家ぎ かとなす。

【字句謹解】◯曾祖 祖父の父のしょう ◯玄孫 孫の子のしょう ◯奕世 代々の意、曾祖父そうそふ・祖父・父・自分・そん玄孫げんそんと引きつづいて ◯孝順 父母に孝行で何一つその命にそむかない ◯戸を擧りて 一家中の全部 ◯復を給し 免稅の事 ◯門閭に表旌し 村里の入口に札を立て名前を記して人々の模範とする ◯義家 義理に厚い家。

【大意謹述】曾祖父そうそふから玄孫げんそんに至る迄、世々よ よ父母に孝行で、その命に背かない家があつたならば、彼等一家を優遇するために免稅し、村里の入口に札を立て、その孝行な人々の姓名を書いて一般の模範とし、義理に厚い家としてこれを重んずる。

【備考】こうは、人倫じんりん中、ちゅうと共に、最高の地位にあるが、それを口にするばかりでは一向、意味がない。これを實行じっこうの上に移すに及んで、始めて價値か ちを生ずる。文武もんむ天皇はこの思召おぼしめしのもとに、孝子こうしを表彰する事とせられたのであらうと拜察はいさつする。

 この有難い仰せによつて、こうの德は一層光を放ち、同時に、士民しみんの間に、こうの重んずべきことを泌々しみじみ、感じたものも多く、風敎ふうきょう上、至大しだいの好影響があつた事と思はれる。