8-16 陋習を禁ずるの詔 孝德天皇(第三十六代)

陋習ろうしゅうきんずるのみことのり(第十六段)(大化二年三月 日本書紀

(營墓の詔)

罷市司要路津濟渡子之調賦、給與田地。凡始畿內、及四方國、富農作月、早務營田。不合使喫美物與酒。宜差淸廉使者告於畿內、其四方諸國國造等、宜擇善使、依詔催勤。

【謹譯】市司いちのつかさ要路ぬまのみち津濟つわたり渡子わたしもり調賦みつぎめて田地でんち給與きゅうよせん。およ畿內きないよりはじめて四方よ もくにおよぶまで、農作のうさくつきあたりては、すみやかにつくることをつとめよ。美物びぶつさけとをはしむからず。よろしく淸廉せいれんなる使者ししゃつかわして畿內きないげよ。四方よ も諸國しょこく國造くにのみやつこよろしく使つかいえらびて、みことのりままつとめよ。

【字句謹解】◯市司 市長に使はれる小役人 ◯要路 要害の地を守る者、關守せきもりなどの類 ◯津濟 港にゐて船舶を取締る役人 ◯渡子 川のかたわらにあり渡河と か便びんを司る者 ◯農作の月 農作物の種をく時 ◯美物 高價こうかな魚類のこと ◯淸廉なる使者 淸廉せいれん潔白けっぱくな者、少しも賄賂わいろむさぼらない人を意味する。

【大意謹述】市長しちょうもとに召使はれてゐる小役人こやくにん關守せきもり、港を守る人々、渡し舟を司る者などからの租稅そぜいちょうすることをめ、反對はんたいに土地をあたへるやうにしよう。

 皇都こうと周圍しゅういに近い地方を始めとして、諸國一般に、農作物の種をく時分になれば、田をいとなむことを奬勵しょうれいするのがよろしく、萬事ばんじ節約を守らせて、高價こうかな魚類、酒などを口にさせてはいけない。このよし淸廉せいれん潔白けっぱく使者に命じて皇都こうと附邊ふへんの諸國に知らせるやうにせよ。又、諸國の國造くにのみやつこなどは、これも信用出來る者を責任者として、ちんの意を實行じっこうさせるやう取りはからつて欲しい。

【備考】以上、種々の方面にわたつて、曲れる人民の心をめ、堕落した民風みんぷうを一新しようとされた思召おぼしめしのほどがうかがはれる。そしてこの最後の御言葉の中には、特にプロレタリアの生活苦を救ふことに、大御心おおみこころろうせられたことが、はつきり拜察はいさつされる。

 赤化せきかは、ややもすると、皇室におかせられて、プロレタリアにたいし、同情せらるることが少いといふやうな事を主張する。けれどもそれは事實じじつでない。現にここに述べられた勅語ちょくごによつても、それが明白にわかるであらう。プロレタリアにたいして同情を次第に失つたのは、藤原政治、武家政治が跋扈ばっこして皇室の御精神ごせいしんおおさえぎつてからの事だつた。このてん、幾多の詔勅しょうちょくことに『社會しゃかい思想篇』において、明白にされよう。