8-13 陋習を禁ずるの詔 孝德天皇(第三十六代)

陋習ろうしゅうきんずるのみことのり(第十三段)(大化二年三月 日本書紀

(營墓の詔)

復有被役之民、路頭炊飯。於是路頭之家、乃謂之曰、何故任情炊飯余路、强使祓除。復有百姓就他借甑炊飯。其甑觸物而覆。於是甑主乃使祓除。如是等類、愚俗所染。今悉除斷、勿使復爲。

【謹譯】つかはるるたみありて、みちほとりかしむ。ここいてみちほとりいえすなわかたりていわく、なんゆえこころままめしあたりかしぐと、ひて祓除ふつじょせしむ。百姓ひゃくせいきてこしきりてめしかしぐことあり。こしきものれてくつがえる。こここしきしゅすなわ祓除ふつじょせしむ。かくごととうたぐい愚俗ぐぞくならへるところなり。いまことごと除斷じょだんしてふたたびせしむることなかれ。

【字句謹解】◯役はるる民 課役かやく從事じゅうじしてゐる民 ◯炊ぎ飯む めしをたいて食事をする ◯情の任に 自由に、勝手の意 ◯强ひて祓除せしむ もうこの場合は、土地をきよめるのではなく、金錢きんせんを强要することを意味する ◯甑飯を炊く器具 ◯物に觸れて覆る 何かの物にあたつて顚覆てんぷくして破損する ◯愚俗の染へる所 無智む ちな人々が習慣としてゐること ◯除斷 廢止はいしする。

【大意謹述】理由なく、形式化したきよめが多く行はれてゐるのは、當代とうだい通弊つうへいである。以上述べた他にちんは更に一二例をげていましむべきてんを深く諸臣に銘記めいきさせたい。遠國えんごく課役かやく從事じゅうじする者は、各自に行李こうりたずさへてゐるので、路上で炊事するのもむをまい。しかるにこれを見たその地の者は、何故なにゆえ勝手に土地を火でけがすのかと文句を付け、きよめとしょうして金錢きんせんを强要することが多い。これはよくない。

 更に他人の所有する炊事道具を借りてめしくことがある。しその道具が何かにれて顚覆てんぷくすると、道具の所有主は破損の程度にして法外な金額を要求することが少くない。およそここに說明した各種の事實じじつは、全部無智む ちな者の間にひろく行はれてゐるので、近年その害が目立つて多くなつた。ゆえに朕は今後げんにこれらを禁止する。