8-12 陋習を禁ずるの詔 孝德天皇(第三十六代)

陋習ろうしゅうきんずるのみことのり(第十二段)(大化二年三月 日本書紀

(營墓の詔)

復有百姓溺死於河。逢者乃謂之曰、何故於我使遇溺人。因留溺者友伴、强使祓除。由是兄雖溺死於河、其弟不救者衆。

【謹譯】百姓ひゃくせいかわおぼれてするあり。へるものすなわかたりていわく、なんゆえわれ溺人おぼれびとはしむると。りて溺者おぼれしもの友伴ともがきとどめて、ひて祓除ふつじょせしむ。これりて、あにかわおぼぬるといえども、おとうとすくはざるものおおし。

【字句謹解】◯百姓 一般國民を指す。朝廷につかへてゐる者以外のすべてで、非常にひろい意味を持たせたことばである ◯我に溺人を遇はしむる どうして自分におぼれた人を見せるやうなことをしたか、この上もなく不吉ではないかと非難したこと。

【大意謹述】また時折河に落ちて溺死できしする者がある。それを通り合はせて見た者は、なぜかうした不吉な者を自分に見せるのかと非難して溺死者の友人をその場所にとどめ、無理にきよめさせる、本來血緣けつえんの者でなければ行へないことを友人などにさせるので、兄が河に溺れ死んでも、弟が救ふことが出來ない場合が多い。