大日本詔勅謹解1 思想社會篇 例言

例言

一、『大日本だいにほん詔勅しょうちょく謹解きんかい』の全結構は、皇祖こうそ以來今上きんじょう陛下に至る重要詔勅を、『思想社會しゃかい篇・政治經濟けいざい篇・道德敎育篇・軍事外交篇・神祇しんぎ佛敎ぶっきょう篇・雜事ざつじ篇及び索引』の六篇六卷に類聚るいじゅうしてこれを謹解きんかいし、別に『詔勅しょうちょくと日本精神せいしん』の一卷を加へしものなり。

一、詔勅御趣旨ごしゅし多岐た き廣汎こうはんにわたり、所屬しょぞく部門を截然せつぜん區別くべつしがたきものは、なるべく近似きんじ篇中へんちゅうに於てそれぞれ謹解したり。

一、詔勅謹解の樣式は、各詔勅每に、本文ほんもん謹譯きんやく・字句謹解きんかい・大意謹述きんじゅつの四項を設けて詳說しょうせつし、必要におうじ備考欄を設けて補足的說明を加へ、史實しじつ・故事出典・地名・人名・故式こしき典令てんれい等特別の說明を要するものは、字句謹解欄に〔註〕の項を設け、努めてこれを詳說せり。

一、各詔勅の標題は、おおむ古來こらいの例にりしも、しく不適當ふてきとうなるものは、內容におう適宜てきぎ改題せるものあり。

一、各詔勅發布はっぷ年月ねんげつおよび出典書目は、いづれも標題のもと併記へいきして、一々これを明らかならしめたり。

一、譯文やくぶんやすからしむるために、原文の意を損ぜざる範圍はんいにおいて、助詞・接續せつぞく詞・敬語等を補足せるものあり。譯文やくぶんは特に平假名ひらがなを用ひたり。

一、本書の目的は、大衆の理解を主とするを以て、その叙述じょじゅつは努めて通俗つうぞく平易へいいむねとし、必ずしも研究的ならず。

一、ほ本書は、その卷數かんすう關係かんけい上、宣命せんみょうに就て記述し得ざりしをはなは遺憾いかんとす。

一、大意謹述欄は、著者一個の管見かんけんを述べしものなれば、當然とうぜんその末尾に『・・との御意ぎょいと謹つつしんで拜察はいさつたてまつる』と記すべきを、繁雜はんざつを避けて特にこれを省略せり。讀者どくしゃこれをりょうとされよ。

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一、本篇(思想社會篇)は、歷朝れきちょう詔勅しょうちょく中、特に思想問題・社會しゃかい問題に關連かんれんありと思惟し いさるるもの百一しょう收錄しゅうろくして、思想社會篇と名づけしものなり。

一、本篇所載しょさい詔勅を、各時代別に記せば、左の如し。

 神代 一、大和朝廷時代 八、律令制時代 一〇、奈良朝時代 三九、平安朝時代 二九、鎌倉時代 一、江戸時代 一、明治時代以降 一二。

一、同じく孝明こうめい天皇以前の分を、各出典書目別に示せば、左の如し。

 日本書紀 一七、續日本紀 四七、日本後紀 三、續日本後紀 五、文德實錄 三、三代實錄 四、類聚國史 五、類聚三代格 一、本朝文集 一、本朝文粹 一、平戸記 一、孝明天皇紀 一。

一、本篇詔勅本文ほんもんかんしては、努めて古今の諸書を渉獵しょうりょう參照さんしょうして、その精確せいかくを期したりといえども、誤謬ごびょうなきをがたし。右にかんする原本およびおもなる對校たいこう本を示せば左の如し。

1 日本書紀 版本はんぼんあり寫本しゃほんあり、その類本るいほんきはめて多し。しかるに寬文かんぶん九年の刊行本かんこうぼん最もひろく世に行はるるを以て、これを底本ていほんとし、主として佐伯さえき有義ありよし編纂へんさん六國史りくこくし』その他數本すうほんを參考して校訂こうていせり。

2 續日本紀 日本紀しょくにほんぎの類本は、書紀しょきの如く多からずといえども、ほ內閣本・尾張本その他數種すうしゅあり。すなわ明曆めいれき三年立野たつの春節はるさだ校訂の版本を以て底本とし、佐伯氏『六國史』その他により對校せり。

3 日本後紀 はなわ檢校けんこうの校訂にかかる日本後紀こうきを底本とし、主として佐伯氏『六國史』を參照せり。

4 續日本後紀 六國史中錯亂さくらん誤讀ごどく最も多く、通讀つうどくはなはだ困難なり。本書刊本は、寬文かんぶん八年の本と寬政かんせい七年の再刻本とあるも、後者誤讀ごどく多きに就き、寬文かんぶん本を原本とし、佐伯氏『六國史』その他を參照して校訂せり。

5 文德實錄 刊本としては、寬文かんぶん本・寶永ほうえい本・寬政かんせい本等あるも、就中なかんずく、寬政本ややすぐれたるを以てこれを底本とし、佐伯氏『六國史』その他により對校せり。

6 三代實錄 松下氏校訂寬文かんぶん十三年の版本を以て底本とす。

7 類聚國史 仙石氏校刊本を底本とし、主として黑板くろいた勝美かつみ氏編『國史こくし大系たいけい類聚るいじゅう國史こくし』により對校し、かたわ日本紀略にほんぎりゃく扶桑ふそう略記りゃっき類聚るいじゅう代格だいきゃく等の諸本を參考せり。

一、書紀しょき以降諸古書こしょかたは、原則として古訓やまとよみしたがふべきを妥當と信ずるも、本書の講述こうじゅつが、もと一般大衆を對告たいごうとせるにかんがみ、特殊の字句および慣例かんれいあるものを除くのほか、必ずしも難澁なんじゅうなる古訓やまとよみ蹈襲とうしゅうせず、なるべく簡明かんめいにして親しみやすき現代げんだいよみしたがふこととせり。例へば

 長幼このかみおとと次第つぎておよ課役おおせつかうこと先後さきのち

といふべきを

 長幼ちょうよう次第しだいおよ課役かえき先後せんご

める如し。