135 曉鷄聲 今上天皇(第百二十四代)

曉鷄聲 ゆめさめて我世わがよをおもふあかつきに長ながなきどりの聲こえぞきこゆる。 【字句謹解】◯ゆめさめて 夢覺さめて、御夢おんゆめから御目覺お め ざめ遊ばすことで、「あかつき」の序じょとして用ひられてある ◯我世をおもふ 陛下が御統治あらせられ…

134 社頭雪 今上天皇(第百二十四代)

社頭雪 ふる雪ゆきにこころきよめて安やすらけき世よをこそいのれ神かみのひろまへ。 【字句謹解】◯ふる雪に 雪の降つてゐる中うちにの義であるが、ここでは降り止んだ後のちとしても差支ないやうに思はれる ◯こころきよめて 潔白な雪に心の濁にごりをあらひ…

133 海邊巖 今上天皇(第百二十四代)

海邊巖 いそ崎ざきにたゆまずよするあら波なみを凌しのぐいはほの力ちからをぞおもふ。 【字句謹解】◯いそ崎 海岸線にそうて他たの場所より突出した部分をいふ ◯たゆまず 常にはげみ續つづける形容 ◯よする 打ち寄せること ◯あら波 荒い激しい波の意 ◯凌ぐい…

132 田家朝 今上天皇(第百二十四代)

田家朝 都みやこいでてとほく來きぬれば吹ふきわたる朝風あさかぜきよし小田お だのなか道みち。 【字句謹解】◯都いでて 帝都ていとをはなれて ◯とほく來ぬれば 遠く地方に來きてみるとの意 ◯吹きわたる 諸方を一樣ように吹くこと ◯朝風きよし 朝の風が少し…

131 山色新 今上天皇(第百二十四代)

山色新 山々やまやまの色いろはあらたにみゆれどもわがまつりごといかにあるらむ。 【字句謹解】◯色はあらたに 景色は每年まいねん春になれば新しく生れかはつたやうに美しく見える意 ◯わがまつりごと 朕ちんが統治してゐる日本の政治 ◯いかにあるらむ どう…

130 鹿 大正天皇(第百二十三代)

鹿 おもしろく打うちはしつれどなく鹿しかのこゑきくときはあはれなりけり。 【字句謹解】◯おもしろく 興きょうに乘のつて ◯打ちはしつれど 鹿を打ち止めはしたもののの意で、鹿を打つた時までは興味の方が先さきに立つて他たに何事も考へなかつたが、今では…

129 海邊松 大正天皇(第百二十三代)

海邊松 しほ風かぜのからきにたへて枝えだぶりのみなたくましき磯いその松原まつばら。 【字句謹解】◯しほ風 海潮かいちょうをふくんで、海上から濱邊はまべに吹きつける風のこと ◯からき 辛からきの義で、汐風しおかぜが猛烈に吹く意 ◯たへて 耐へ忍んで ◯…

128 雪中竹 大正天皇(第百二十三代)

雪中竹 ふりつもるまがきの竹たけの白雪しらゆきに世よの寒さむけさをおもひこそやれ。 【字句謹解】◯ふるつもるまがきの竹 垣根かきねとしてある竹の上に雪が降つて、つもつたこと ◯世の寒けさ 世間の寒さの義で、貧民ひんみんが寒さのためにふるへてゐるで…

127 朝晴雪 大正天皇(第百二十三代)

朝晴雪 ゆたかにも雪ゆきぞつもれる秋津島あきつしまめぐりの海うみは朝あさなぎにして。 【字句謹解】◯ゆたか ゆつたりとせまらず、滿みち足りた形容 ◯雪ぞつもれる 雪がつもつたとの義で、雪は豐年ほうねんと平和とのシンボルと解されてゐる ◯秋津島 我が…

126 寄國祝 大正天皇(第百二十三代)

寄國祝 としとしにわが日ひの本もとのさかゆくもいそしむ民たみのあればなりけり。 【字句謹解】◯としとしに 年々としどしにの義で、一年每ごとにとのこと ◯さかゆく 盛大になつて行ゆく ◯いそしむ民 身分に應おうじて自己の職分しょくぶんに懸命けんめいと…

125 正述心緒 明治天皇(第百二十二代)

正述心緒 四方よ もの海うみみなはらからと思おもふ世よになど浪風なみかぜのたちさはぐらむ。 【字句謹解】◯四方の海 四海かいのうちの義で、廣ひろく全世界の凡すべてを意味される御言葉である ◯はらから 同胞どうほうの義で、同じ親から出た直系のこと ◯…

124 夏山水 明治天皇(第百二十二代)

夏山水 年々としどしにおもひやれども山水やまみずをくて遊あそばん夏なつなかりけり。 【字句謹解】◯年々に 每年まいねんの義で、ここでは每年夏が來くる度每たびごとにの意となる ◯おもひやる 自分の心を他たの方面に傾けること、從したがつて或ある事、或…

123 庭訓 明治天皇(第百二十二代)

庭訓 たらちねの庭にわの敎おしえはせまけれどひろき世よに立たつ基もといとはなれ。 【字句謹解】◯たらちね 兩親りょうしんのこと ◯庭の敎 家庭に於おける敎訓きょうくん ◯せまけれど 多方面に一々詳細には說とかないが ◯ひろき世 廣大こうだいな世の中の意…

122 述懷 明治天皇(第百二十二代)

述懷 いにしへの書ふみ見みるたびに思おもふかなおのが治おさむる國くにはいかにと。 【字句謹解】◯いにしへの書 昔の文獻ぶんけん、これは別にその種類を示してゐられないから、解かいする方でも强しひて何の書ふみと定める要ようはない。代々世の盛衰に關…

121 國 明治天皇(第百二十二代)

國 千早ちはやぶる神かみの御代み よよりうけつげる國くにをおろそかに守まもるべしやは。 【字句謹解】◯千早ぶる 强猛きょうもうな勢いきおいを持つとの義で、神かみの枕言葉まくらことばとなつて使用される ◯神の御代よりうけつげる國 我が日本の意。天照…

120 國 明治天皇(第百二十二代)

國 よきを取とりあしきを捨すてて外國とつくにに劣おとらぬ國くにとなすよしもがな。 【字句謹解】◯よきを取り 優れた部分を採用する ◯あしきを捨てて 我が國情こくじょう及び國體こくたいに反する部分を打ち捨てて顧かえりみないこと ◯外國に劣らぬ國 何い…

119 折にふれて 明治天皇(第百二十二代)

折にふれて 世よの中なかの人ひとに後おくれをとりぬべしすすまむときに進すすまざりせば。 【字句謹解】◯世の中の人 世間一般の人々 ◯後れをとりぬべし 一歩讓ゆずる結果になつてしまふであらう ◯すすまむときに進まざりせば 進む時機に躊躇ちゅうちょして…

118 道 明治天皇(第百二十二代)

道 竝ならび行ゆく人ひとにはよしや後おくるとも正ただしき道みちをふみなたがへそ。 【字句謹解】◯竝び行く人 自分と等しい地位にあり、今後も當然とうぜん同じやうに進まうとする人々 ◯よしや 萬まん一といふ程の意 ◯後るとも 一歩讓ゆずつてその後に立つ…

117 夜木枯 明治天皇(第百二十二代)

夜木枯 大おおぞらの星ほしの林はやしも動うごくかと思おもふばかりにこがらしの吹ふく。 【字句謹解】◯星の林 星座の義。星の多く集つたのを林に見立てていふ語。〔註一〕參照さんしょう ◯動くかと思ふばかり 星までも風のために動くかと思ふ程の義で、木枯…

116 擧國一致 明治天皇(第百二十二代)

擧國一致 千萬ちよろずの民たみの心こころのそろふこそ國くにのさかゆくもとゐなりけれ。 【字句謹解】◯千萬の民 我が日本國民こくみんの全部を指されたもの ◯心のそろふ 心の底までも完全に一致する ◯さかゆく 榮さかえ行ゆくこと ◯もとゐ 基本の意。 【大…

115 仁 明治天皇(第百二十二代)

仁 ちよろづの民たみの心こころををさむるもいつくしみこそ基もといなりけれ。 【字句謹解】◯ちよろづの民 千萬まんの民、我が八千萬まんの國民こくみんを指された ◯心ををさむるも 國家こっか統治の根本義こんぽんぎは、勇威ゆういに依よつて國民こくみんを…

114 夢 明治天皇(第百二十二代)

夢 たらちねの親おやのみまへにありとみし夢ゆめのおしくも覺さめにけるかな。 【字句謹解】◯たらちねの親 垂乳根たらちねの親、幼時ようじから養育された親の義で、この場合は、御父帝ごふてい孝明こうめい天皇を仰おおせられたのである。「たらちね」は『…

113 寄神祝 明治天皇(第百二十二代)

寄神祝 あまてらす神かみの御光みひかりありてこそわが日ひの本もとはくもらざりけれ。 【字句謹解】◯あまてらす神 高天原たかまのはらにましまして地上の萬物ばんぶつを照てらし給たまふ神々かみがみの意。天照大御神あまてらすおおみかみを中心としてその…

112 神祇 明治天皇(第百二十二代)

神祇 とこしへに國くにまもります天地あめつちの神かみの祭まつりをおろそかにすな。 【字句謹解】◯とこしへ 永久にの意で、限りない時間をいふ ◯國まもります 我が國くにを守護し給たまふ ◯天地の神の祭 天神てんじんとはタカマノハラにまします諸神しょし…

111 日 明治天皇(第百二十二代)

日 さしのぼる朝日あさひのごとくさはやかにもたまほしきは心こころなりけり。 【字句謹解】◯さしのぼる朝日 勢いきおいよく中空なかぞらさして登つて行ゆく朝日 ◯さはやか 淸々せいせいとして氣持きもちのよいこと ◯もたまほしきは 持ちたいものは。 〔注意…

110 夏車 明治天皇(第百二十二代)

夏車 重荷おもにひく車くるまのおとぞきこゆなるてる日ひの暑あつさたへがたき日ひに。 【字句謹解】◯重荷ひく車のおと 勞働ろうどう者が身に餘あまる重い荷物を車に積み、苦しさうに一歩づつ引いてゆく繼續けいぞく的な車の音 ◯てる日の暑さ 眞夏まなつの午…

109 塵 明治天皇(第百二十二代)

塵 ともすれば浮うき立たちやすき世よの人ひとのこころの塵ちりをいかではらはむ。 【字句謹解】◯ともすれば 時とすればの義で、少し心を緩ゆるませるとかうした事が起ると敎戒きょうかいあられたもの ◯浮き立ちやすき 輕薄けいはくになり易やすい ◯こころの…

108 敎育 明治天皇(第百二十二代)

敎育 國くにのため力ちからつくさむわらはべを敎おしふる道みちにこころたゆむな。 【字句謹解】◯國のため力つくさむ 國家こっかのために將來しょうらいあらん限りの力を盡つくして奉公ほうこうしようとするとの意で、第二國民こくみんである兒童じどうの事…

107 神祇 明治天皇(第百二十二代)

神祇 目めに見みえぬ神かみの心こころに通かよふこそ人ひとの心こころのまことなりけれ。 【字句謹解】◯目に見えぬ 神かみは我々の眼めで見えない空間に居いられると考へられてゐるのでかく言はれた ◯神の心 絕對ぜったいに正しく公平な神かみの御心みこころ…

106 孝 明治天皇(第百二十二代)

孝 たらちねの親おやにつかへてまめなるが人ひとのまことの始はじめなりけり。 【字句謹解】◯たらちねの親 たらちねは垂乳根たらちねで母親の義であるが、後のちには兩親りょうしんのことを言ふやうになつた枕言葉である。たらちねに對たいして父親は最初「…